「そうですね、理屈は理解できます。皇后、そして三貴人の有力な候補にあがっているのはわたくしを含めて五名。あら、ちょうど全員がこの卓にそろっていますね」
 あらためて名をあげる必要もないだろう。千華宮の誰もが同じ認識でいる。
 候補者は、明琳・月麗・桃花・柳花・そして美芳の五名だ。
「五名で四つの席を争う。ひとり、あぶれますね。そのひとりはおそらく……わたくしか桃花さまになるでしょうね」
 当事者の五人だけではない。聞いていたみんながハッと息をのんだ。そういう空気は誰もが感じて察してはいただろうが、言葉にする勇気がある者がいるとは思っていなかったのだろう。おまけに口にしたのは当人である美芳だ。

(月麗さんも素直ですが、彼女も負けていないですねぇ。候補者たちはみな、それぞれに魅力的です)
 焔幽も呆気に取られた様子で美芳を見つめている。
「桃花があぶれるかもって、あなたが決めることではないでしょう? 勝手なことを言わないでちょうだい」
 姉にくだされた評価にムッとした顔で声をあげたのは柳花だ。けれど美芳は顔色ひとつ変えない。柳花をちらりと見て淡々と答える。
「わたくしの主観はいっさい加えておりませんが。桃花さまは素晴らしい方と存じておりますし、資質だけなら明琳さまにも匹敵するでしょう。ですが、お身体が病弱でいらっしゃる。子を産む前になにかあるかも……というのは大きなマイナスです」