ゲームに勝った佑馬は、莉桜に言った。莉桜が生きている間ずっと一緒にいてほしい、と。
そして莉桜は今も生きている。約束は有効なのだ。
だから考えた結果、櫻田佑馬の名前と一緒に生きることを選んだ。
……と、自分では思っていた。
だが、この前卓にこう指摘されて気付いた。
『お前は櫻田の死に責任を感じている。だから、あいつに成り代わって生きることで、その罪を償おうとしているんじゃないか?』
きっとその通りだ。
──ただ、佑馬の死に責任を感じているというのは少し違う。
確かに彼は、莉桜の手術成功を願って、普段見向きもしない神社に行って、偶然その階段から落ちたのかもしれない。そして、それについて莉桜が自分を責めたこともあった。
だけど、もしかしたらそれだけでは終わらないのかもしれない。
莉桜はこれまで、その事実を確認することから逃げていた。
「今日は、裕美子さんに聞きたいことがあってお邪魔しました」
緊張から、ドクンドクンと鼓動が速くなる。
裕美子とは上手く目を合わせることができず、代わりにゆらゆらした紅茶の湯気を眺める。
「佑馬は、階段から落ちた際に頭を強く打って亡くなったと聞きました。それはいわゆる、脳死状態だったんじゃないですか?」
「……」
「佑馬の臓器は、誰かに提供されたのでしょうか」
莉桜は静かに息を吐いて、裕美子の答えを待つ。
裕美子は紅茶を一口飲んで、一度ゆっくりまばたきしてから莉桜をまっすぐ見る。
その時間が、永遠のように長く感じた。
「なるほど。要するに莉桜ちゃんは疑っているわけね。……貴女に移植された心臓が、佑馬のものじゃないかって」
そう。
佑馬の死を知ったあの日から今まで、その可能性がずっとずっと引っかかっている。