答えようとして口を開きかけた莉桜が声を発する前に、卓は続ける。


「お前は櫻田の死に責任を感じている。だから、あいつに成り代わって生きることで、その罪を償おうとしているんじゃないか?」

「……」

「俺は……お前にはちゃんと、悠木莉桜として生きて欲しい」


 莉桜は無意識に息を止めていた。
 彼は、莉桜に恋愛関係を抱いているから突然結婚を申し込んできた……なんてことではきっとない。


「……私が本気で佑馬として生きるなら、男と結婚はしない、と。そういうことですか?」


 そう聞けば、卓は小さくうなずいた。


「言っておくが、俺だって生半可な覚悟で言ったわけじゃないからな。こっちだって人生がかかってるんだから当然だ。ユウとは、夫婦としてもそれなりに上手くやっていけると思ってる」


 すぐその場で「はいそうですか」と言えるはずはない。

 莉桜はやっとの思いで、「少し考えさせてください」と答えた。