……その手紙を、莉桜は何度も繰り返し読んだ。
櫻田佑馬、という名前の部分をそっと撫でる。
「っ」
ぽたぽたと、原稿用紙に水滴が落ちた。
どうして水滴が。大事な佑馬からの手紙の字がにじんだらどうしてくれるんだ。そう思ってすぐ、その水滴の正体は自分の目から零れ落ちる涙なのだと気が付いた。
「う……あ……あああああああ」
ここにきてようやく、莉桜は声を上げて泣き叫んだ。
大好きなあの子が本当にいなくなってしまったのだという実感と、これを書いたときには確かに生きていたのだという息遣いを感じられる手紙に、感情をぐしゃぐしゃ乱されてしまった。
移植手術をして、命をもらって、これから一緒に生きていけると思ったのに。
キミの願いを叶えようと思ったのに。
失ってしまったあまりに大きなもの。
莉桜は一晩中、声が枯れても涙が出なくなっても泣き続けた。