吐き気に襲われ口を押さえる。

 だが胃の中は空だったようで、胃液の味だけが込み上げてきた。


「いやっ、だめっやだ、あああああああああああああ」

「莉桜!? どうしたの!? 気分悪い!?」



 ただごとではない莉桜の声を聞きつけた母が、焦った様子で莉桜の部屋のドアを開ける。

 床に座り込み力なくうつむく莉桜の背を、強くさする。


「お母さん……佑馬、佑馬は……」

「何? 佑馬くんがどうしたの?」

「っ、会わせて、今すぐ……。お願い、佑馬に会わせてよ……」


 母親にしがみついて必死に訴えるその声だけが、部屋に響き渡っていた。