「入院中に仲良くなった、一つ年上の有紗ちゃん。私なよりずっと重い病気で、学校にもほぼ行けてないらしくて。それなのにいつも生きることに前向きで……」
淡々として無表情。だけどわずかに声が揺れる。
「漫画とか小説とか、物語が大好きで、もし健康な身体になれたら漫画みたいなキラキラした学園生活を送ってみたいよねって楽しそうに笑ってた。薬を飲まなくてよくなったら、好きなものを好きなだけ食べたいなって目を輝かせてたっけ。治る見込みなんて全然ないのに、弱音はまず吐かなくて」
莉桜はゆっくり目を閉じて、軽くうつむく。
何かを堪えるようにそのまましばらく固まって、それから絞り出すような声で言った。
「……あーちゃん、私が検査受けに行った日の三日前に亡くなったんだって。久しぶりに話したいなって言ったら、お世話になってる看護師さんが教えてくれた」
……言葉が出てこなかった。
莉桜は社交的な性格で、友達をつくるのは得意。
だけど考えてみれば、莉桜がこれまでの人生で友達をつくってきた場所は、学校よりも病院の方が多い。となれば、親しくなっているのは彼女と似た境遇の人たちであるはず。似た境遇だからこそ、仲良くなれるという部分も当然ある。
「佑馬にこういう話あんまりしてこなかったから、ちょっと言うの嫌だったんだ。だけどこれまでだって何人もいたよ。私を置いていなくなっちゃった友達」
「そう、だよな……」
「どんなに生きる希望を持っててもさ、生きたいって願っててもさ、結局はそんなの関係なしに死んじゃうんだよ。平等にね」
莉桜はぐしゃっと制服のスカートを握りしめた。
綺麗にアイロンをかけ整えられたスカートにできたその皺が、今の彼女の感情全てを受け止めているような気がした。
「……希望を持つのなんて、馬鹿馬鹿しいよ」