実際の活動を体験してみてこその部活見学。正しい意見だ。
部長は腕を組んで「好きにしろ」と言い捨てると、自分はまた原稿に戻った。
「さー、てなわけでとりあえずこっち座ってよ、櫻田くんの彼女!」
「はーい」
呼び名がすっかり「櫻田の彼女」で定着している。本名で呼べばもっと短くて済むものをなぜわざわざ長くする。楽しんでいるから以外に理由はないだろうが。
あと訂正する気配すら見せない莉桜もどうなのだろう。
「さっき創作には興味ないって言ってたけど、経験は全くなし?」
「小学生のとき授業でやったりとかはした気がします」
「あー、あるよねそういう授業。でも小学校の授業と違うところがひとーつ! じゃーん、執筆にパソコンが使えまーす!」
説明する部員はドヤ顔をしているが、別に部所有の物ではない。コンピューター部で使っていないノートパソコンを、活動時間だけ借りてきているだけだ。
「まあ、部長や櫻田くんは意地でも原稿用紙に手書きしてるけどね」
「へえ、佑馬字下手なのに手書きなんだ」
「……余計なお世話だ」
確かにパソコンを使って書く方が、直すのも読み返すのも共有するのも簡単だ。難しい漢字も予測変換で楽に打ち込める。慣れたらサクサク書けるのだろう。
だけど僕は、原稿用紙を一マス一マス埋めていく感じだとか、鉛筆やシャーペンで手が汚れていく感じなんかが好きだ。まだ当分の間はアナログな方法で貫くつもりでいる。
「まあ、執筆方法は莉桜の自由だ。パソコンのキーボード打ち慣れてるならパソコン使ったらいい」
僕は言い返したついでに説明役を引き継いだ。
「『試しに短い小説を書いてもらう』って話だったけど、基準としては8000字までで収めるのがショートショート、それよりずっと短く300字から800字ぐらいのが掌編……って言ったな。まあ僕もちゃんと覚えているかは怪しいけど」
「短編の中にも種類があるんだ」