文芸部。僕の所属する部だ。
 部員数は、部が成り立つ5人をギリギリ上回っている7人。主な活動内容は詩や小説などの創作。日によっては単に小説を読んで過ごすだけのこともある。


「考えてみたらさ、佑馬が部活をしているとこなんて見たことないんだもん。見学させてよ」

「見学するのは部活であって僕じゃないからな」

「あっはは、わかってるって」


 その顔は今一つ信用ならない。

 だが、そもそも部活見学を提案したのは僕だ。莉桜が文芸部を選ぶことも想定内。


「……なら、今日がちょうど活動日だから今から見に来るか?」

「行く行く! あ、お母さんに連絡入れるからちょっとだけ待ってね」


 莉桜は楽しそうに笑顔を浮かべたまま、母親に連絡すべくスマホをトントントンとタップする。
 こうしていると、莉桜は死にたがりどころか、むしろいつもにこにこして何でもない毎日に楽しみを見出せるタイプに見える。


「よし、これでオッケー。ねえ文芸部っていつもどこで活動してるの?」


 スマホを鞄にしまい、莉桜は少しそわそわした様子で立ち上がった。


「ていうかさ。入学した時期ならまだしも、こんな冬になってから部活の見学なんて、今さらって思われないかな」

「そこは心配しなくていい」


 確かにこんな微妙な時期に部活の加入を検討する人は少ない。
 しかし、『五人以上のメンバーと顧問さえ確保すれば部活動として登録できる』というこのルール、逆に言えば五人が集まらなかったらその時点で廃部となる。どんなタイミングであろうが、メンバーが増えればそれだけ廃部の危機から遠ざかれるのだから無下にされるはずがないのだ。


「文芸部はいつも図書室の隣の教室で活動してる。何かの資料が欲しくなったときに便利だから」


 僕は廊下を移動しながらそんな説明をする。