・
・【キャンプ】
・
テントの中に入ると、リュウが、
「氷の太陽!」
と明らかに魔法を詠唱したので、何だろうと思っていると、テントの上部に氷でできた太陽が浮き始めて、テントの中がひんやりしてきた。
「これで快適に過ごせますよ。夜は活動しますので、ちょっとお昼寝でもしませんか。俺は外で寝てきますので」
と言ってすぐに、振り返りもせず、リュウがテントの外に出ようとしたので、私はリュウの腕を掴んで、
「リュウも一緒にテントで寝ようよっ」
「い、いやさすがに、それは紳士的じゃ、ないようなっ」
と焦った顔のリュウ。
でも、
「何もしなければ紳士的だし、別にもう新婚旅行なわけだから何かしていいんだよ?」
「まだ早いですよ、ゆっくり距離を詰めさせてください」
「でも寝るくらいはいいじゃない、私だってそういうこと今はする気ないし」
「確かに、それならそうかもしれません。そういったことは同意があって成り立つことですからね」
ちゃんとそういう価値観も異世界にあるんだと思った。
ただまあ、
「私はいつでも同意しているけどね」
「そういうことは言わないでください。ドギマギします」
恥ずかしそうにそう言ったリュウの顔が可愛くて、最高だった。今すぐ抱き締めたいけども、このタイミングで抱き締めると話がこじれそうなので我慢した。
結局リュウも踵を返し、テントの中にベッドと寝袋を出してくれて、リュウが、
「では一応段差をつけて寝ましょう」
と言ってきたので、私は可笑しくなって、
「何も起きないように段差をつけるという発想なんなの!」
と私は手を叩いて笑ってしまった。
リュウは顔を赤くしながらも、少し不満げに、
「段差があれば、間違いが起こりづらくないですか……」
「段差にそんな効果あるなんて聞いたことないよ! 段差くらいの壁ならすぐ乗り越えられるよ! そういう愛でしょ! 私とリュウって!」
と自分で言って何だか恥ずかしくなってきた。
愛と口にしたことも照れるし、やっぱり所詮段差の話だし、というところも何だか。
リュウは優しく微笑んでから、
「確かに。段差だって壁だって、梨花となら乗り越えるよ」
と言って私の手を握ってきた。そういういちいち握手してくるところがマジで可愛い。最高かよ。
とはいえ、その後はそのまま私がベッドで、リュウが寝袋に入って、一緒に寝た。結局段差かよと思った。
私はベッドの上からリュウの寝顔を眺めていた時に「いや段差も結構良いな、見やすいな」とも思った。
結局段差は最高だった。
目覚めると、リュウは寝袋からいなくなっていて、トイレかなと思っていながらテントの外に出ると、外でリュウが大きな魚を焼いていた。
「起きましたか、梨花」
「その魚、何?」
「ここの湖で生息しているネーナという魚です。美味しく食べられるんですよ。せっかくなので一緒に食べましょう」
「先に起きて捕まえて料理していたの?」
「そうですよ、俺はショートスリーパーなので全然大丈夫ですよ」
まあリュウが大丈夫と言っているんだからそれを百パーセント信じるけども。
外はもう夕暮れになっていて、空が橙色に輝いていた。
「綺麗……」
ふと呟いてしまった私。
だって空はどこまでも遠く深く、木々も煌めている。
余計な建物は一切無くて、大自然が眼下に広がっている。
何だかこんなところで二人きりでキャンプなんて素敵過ぎると思っていると、リュウが、
「梨花が一番綺麗ですけどね」
と言いながらネーナという魚を大きな皿の上に置いた。
「では食べましょうか、梨花さん」
いや!
「普通に綺麗って言って流れるなよ!」
「そうですね、梨花さん、梨花はそこに綺麗があり続けるので流しちゃダメですよね」
「そうじゃなくて! 普通に可愛いって言うなぁ!」
「俺は大切なことほど何度も言いたいですけども。言っちゃいけないのなら自重します。でも漏れ出たらすみません。綺麗な梨花さん」
そう言ってニッコリ笑ったリュウ。
「いや今の最後に言ったのはわざとじゃん! わざと言ったヤツじゃん!」
「いいえ、自然ですよ」
そうニコニコ笑っているリュウ。
どうやらリュウは自分が褒め攻めしている時は照れが無いらしい。
でも私はリュウの恥ずかしがっている顔が大好きなので、
「そういうこと言う、リュウは最高にカッコイイけどねっ」
するとすぐさま顔を真っ赤にしたリュウ。
いやいや責められるの弱すぎでは? まあいいや、続けよう。
「いろんなことを簡単にこなすし、食事の準備をしていてくれているなんてスパダリじゃん。女性に対して真面目だし、正直そういうところがめっちゃ好き」
「や、やめてください……」
そう言ってそっぽ向いて俯いたリュウへ私は、
「カッコイイリュウも好きだけども、そういう可愛いリュウも見たいなぁ、ねぇ、ダメぇ?」
と甘えると、首をぷるぷる震わせながら、こっちをゆっくり向いたリュウ。
何これ、可愛過ぎだろ。犯罪では?
私はリュウの真隣に立って、頭を撫でてあげると、
「あっ、すみません」
とリュウは会釈した。
いや、
「すみませんて。厳しい上司からお礼を言われたみたいなリアクションしないでよ」
「そうですよね、梨花は優しくて対等な人物ですもんね」
「そうそう、対等なんだから敬語やめてもいいんだよ!」
「善処します」
「それできないヤツのヤツ!」
そんな会話をしながら、またリュウはイスを出してくれて、一緒にネーナという魚を食べた。
ネーナという魚には骨が無くて、めちゃくちゃ食べやすかった。
コラーゲンが多いみたいで、とろとろで、のど越しも良いし、味もウナギみたいで美味しかった。
周りは徐々に闇に包まれていき、夜になってきたところでリュウが光の玉のようなモノを魔法で二つ出して、その光の玉は私とリュウそれぞれ周りを飛び始めた。
「近くはこのライトの衛星で見えますので、あとは遠くを見て下さい。木の魔石が光り始めるはずです」
すると、急に割と近間が光り始めたので、
「あれ」
と声に出すと、リュウが、
「あれはホタルですね、魔石はもうちょっと光が大きいですよ」
「えっ、ホタルもいるんだ、綺麗だね」
「そうですね、虫だからと嫌う人もいますが、俺も神秘的で好きです。ホタル」
こういう時でもいちいち私のことを綺麗と言ったらウザいかもしれないと思っていたけども、ホタルが主役の時はちゃんとホタルを立てて喋ってくれて、バランス感覚最強かよ、と思った。
「梨花、空を見てください」
言われた通り、上を見上げると、そこには満天の星空が輝いていた。
「いつの間に……」
こんな星空なんて、日本では長野県の山のほうへ行かないと見えないだろう。
この異世界には、少なくてもここには排気ガスのようなモノは無くて、空気が澄んでいて、だからこそ星を眺めることができて。
「俺、自然の光、好きなんです。ライトの衛星出しておいてアレですけども」
「私も好きだよ。何だか包まれているような気がして、明るくなれる」
「そうですね」
私はふとリュウのほうを見ると、温かい笑顔で星空を見ていて、そういうところも可愛いなと思った。
でも、
「そろそろ魔石のほうも見ないとダメじゃないの?」
「そうですね、忘れていました。空間が最高過ぎて」
「その空間に私がいても邪魔じゃなかった?」
「邪魔なはずないじゃないですか、一緒にいる、自分以外の人がいてくれているということがまた楽しいんですよ、こうやって話を共有できますし……あっ」
と言ってどこかを指差したリュウ。
その指先を見ると、何かが光っているように見えた。
「あれが多分魔石ですね、緑色に光っていますし、木の魔石で間違いないはずです。取りに行きましょう」
そう言って私とリュウは木の魔石を集めた。
必要な分をとったら、テントに戻り、そこで寝て、朝になったところで次の場所へ移動した。
・【キャンプ】
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テントの中に入ると、リュウが、
「氷の太陽!」
と明らかに魔法を詠唱したので、何だろうと思っていると、テントの上部に氷でできた太陽が浮き始めて、テントの中がひんやりしてきた。
「これで快適に過ごせますよ。夜は活動しますので、ちょっとお昼寝でもしませんか。俺は外で寝てきますので」
と言ってすぐに、振り返りもせず、リュウがテントの外に出ようとしたので、私はリュウの腕を掴んで、
「リュウも一緒にテントで寝ようよっ」
「い、いやさすがに、それは紳士的じゃ、ないようなっ」
と焦った顔のリュウ。
でも、
「何もしなければ紳士的だし、別にもう新婚旅行なわけだから何かしていいんだよ?」
「まだ早いですよ、ゆっくり距離を詰めさせてください」
「でも寝るくらいはいいじゃない、私だってそういうこと今はする気ないし」
「確かに、それならそうかもしれません。そういったことは同意があって成り立つことですからね」
ちゃんとそういう価値観も異世界にあるんだと思った。
ただまあ、
「私はいつでも同意しているけどね」
「そういうことは言わないでください。ドギマギします」
恥ずかしそうにそう言ったリュウの顔が可愛くて、最高だった。今すぐ抱き締めたいけども、このタイミングで抱き締めると話がこじれそうなので我慢した。
結局リュウも踵を返し、テントの中にベッドと寝袋を出してくれて、リュウが、
「では一応段差をつけて寝ましょう」
と言ってきたので、私は可笑しくなって、
「何も起きないように段差をつけるという発想なんなの!」
と私は手を叩いて笑ってしまった。
リュウは顔を赤くしながらも、少し不満げに、
「段差があれば、間違いが起こりづらくないですか……」
「段差にそんな効果あるなんて聞いたことないよ! 段差くらいの壁ならすぐ乗り越えられるよ! そういう愛でしょ! 私とリュウって!」
と自分で言って何だか恥ずかしくなってきた。
愛と口にしたことも照れるし、やっぱり所詮段差の話だし、というところも何だか。
リュウは優しく微笑んでから、
「確かに。段差だって壁だって、梨花となら乗り越えるよ」
と言って私の手を握ってきた。そういういちいち握手してくるところがマジで可愛い。最高かよ。
とはいえ、その後はそのまま私がベッドで、リュウが寝袋に入って、一緒に寝た。結局段差かよと思った。
私はベッドの上からリュウの寝顔を眺めていた時に「いや段差も結構良いな、見やすいな」とも思った。
結局段差は最高だった。
目覚めると、リュウは寝袋からいなくなっていて、トイレかなと思っていながらテントの外に出ると、外でリュウが大きな魚を焼いていた。
「起きましたか、梨花」
「その魚、何?」
「ここの湖で生息しているネーナという魚です。美味しく食べられるんですよ。せっかくなので一緒に食べましょう」
「先に起きて捕まえて料理していたの?」
「そうですよ、俺はショートスリーパーなので全然大丈夫ですよ」
まあリュウが大丈夫と言っているんだからそれを百パーセント信じるけども。
外はもう夕暮れになっていて、空が橙色に輝いていた。
「綺麗……」
ふと呟いてしまった私。
だって空はどこまでも遠く深く、木々も煌めている。
余計な建物は一切無くて、大自然が眼下に広がっている。
何だかこんなところで二人きりでキャンプなんて素敵過ぎると思っていると、リュウが、
「梨花が一番綺麗ですけどね」
と言いながらネーナという魚を大きな皿の上に置いた。
「では食べましょうか、梨花さん」
いや!
「普通に綺麗って言って流れるなよ!」
「そうですね、梨花さん、梨花はそこに綺麗があり続けるので流しちゃダメですよね」
「そうじゃなくて! 普通に可愛いって言うなぁ!」
「俺は大切なことほど何度も言いたいですけども。言っちゃいけないのなら自重します。でも漏れ出たらすみません。綺麗な梨花さん」
そう言ってニッコリ笑ったリュウ。
「いや今の最後に言ったのはわざとじゃん! わざと言ったヤツじゃん!」
「いいえ、自然ですよ」
そうニコニコ笑っているリュウ。
どうやらリュウは自分が褒め攻めしている時は照れが無いらしい。
でも私はリュウの恥ずかしがっている顔が大好きなので、
「そういうこと言う、リュウは最高にカッコイイけどねっ」
するとすぐさま顔を真っ赤にしたリュウ。
いやいや責められるの弱すぎでは? まあいいや、続けよう。
「いろんなことを簡単にこなすし、食事の準備をしていてくれているなんてスパダリじゃん。女性に対して真面目だし、正直そういうところがめっちゃ好き」
「や、やめてください……」
そう言ってそっぽ向いて俯いたリュウへ私は、
「カッコイイリュウも好きだけども、そういう可愛いリュウも見たいなぁ、ねぇ、ダメぇ?」
と甘えると、首をぷるぷる震わせながら、こっちをゆっくり向いたリュウ。
何これ、可愛過ぎだろ。犯罪では?
私はリュウの真隣に立って、頭を撫でてあげると、
「あっ、すみません」
とリュウは会釈した。
いや、
「すみませんて。厳しい上司からお礼を言われたみたいなリアクションしないでよ」
「そうですよね、梨花は優しくて対等な人物ですもんね」
「そうそう、対等なんだから敬語やめてもいいんだよ!」
「善処します」
「それできないヤツのヤツ!」
そんな会話をしながら、またリュウはイスを出してくれて、一緒にネーナという魚を食べた。
ネーナという魚には骨が無くて、めちゃくちゃ食べやすかった。
コラーゲンが多いみたいで、とろとろで、のど越しも良いし、味もウナギみたいで美味しかった。
周りは徐々に闇に包まれていき、夜になってきたところでリュウが光の玉のようなモノを魔法で二つ出して、その光の玉は私とリュウそれぞれ周りを飛び始めた。
「近くはこのライトの衛星で見えますので、あとは遠くを見て下さい。木の魔石が光り始めるはずです」
すると、急に割と近間が光り始めたので、
「あれ」
と声に出すと、リュウが、
「あれはホタルですね、魔石はもうちょっと光が大きいですよ」
「えっ、ホタルもいるんだ、綺麗だね」
「そうですね、虫だからと嫌う人もいますが、俺も神秘的で好きです。ホタル」
こういう時でもいちいち私のことを綺麗と言ったらウザいかもしれないと思っていたけども、ホタルが主役の時はちゃんとホタルを立てて喋ってくれて、バランス感覚最強かよ、と思った。
「梨花、空を見てください」
言われた通り、上を見上げると、そこには満天の星空が輝いていた。
「いつの間に……」
こんな星空なんて、日本では長野県の山のほうへ行かないと見えないだろう。
この異世界には、少なくてもここには排気ガスのようなモノは無くて、空気が澄んでいて、だからこそ星を眺めることができて。
「俺、自然の光、好きなんです。ライトの衛星出しておいてアレですけども」
「私も好きだよ。何だか包まれているような気がして、明るくなれる」
「そうですね」
私はふとリュウのほうを見ると、温かい笑顔で星空を見ていて、そういうところも可愛いなと思った。
でも、
「そろそろ魔石のほうも見ないとダメじゃないの?」
「そうですね、忘れていました。空間が最高過ぎて」
「その空間に私がいても邪魔じゃなかった?」
「邪魔なはずないじゃないですか、一緒にいる、自分以外の人がいてくれているということがまた楽しいんですよ、こうやって話を共有できますし……あっ」
と言ってどこかを指差したリュウ。
その指先を見ると、何かが光っているように見えた。
「あれが多分魔石ですね、緑色に光っていますし、木の魔石で間違いないはずです。取りに行きましょう」
そう言って私とリュウは木の魔石を集めた。
必要な分をとったら、テントに戻り、そこで寝て、朝になったところで次の場所へ移動した。