(みず)()くんの身に悪いことが起こるかもしれない。そう予感させる夢を見て、わたしはおびえた。
 それを回避する手段は、わからない。

 でも、もしかしたらって思いついたこともあった。可能性が少しでもあるのなら、わたしは試してみようと決めた。
 わたしが瑞己くんから離れたら、瑞己くんには壊れものの予知夢の影響が出ないかもしれない。
 だから、会わないって決めたんだ。

 決心した瞬間は、何て大きなことを思いついてしまったんだろう、なんて感じたけれど、いざ実行に移したら、どうってことなかった。

「簡単なこと、だよね……」

 もともと学年が違う。回り道をしない限り、通学路も違う。瑞己くんはまだ正式に演劇部に入ったわけじゃない。
 会おうとしなければ、会わないのがむしろ自然だった。二年生と一年生では、教室が入っている棟も別々で、校内ではすれ違いもしない。靴箱の場所も離れているし、渡り廊下で見かけることすらなかった。

 瑞己くんからのメッセージにも答えないままにした。瑞己くんは、〈カップの金継ぎ、うまくいってるんです〉と写真つきで知らせてくれたけれど。

 ごめんね。

 胸が痛かった。何をしていても苦しくて、少しも集中できない。
 一日一日が長い。瑞己くんと最後に会った日から、まだ四日しか経っていない。
 どうしてなんだろう?
 わたしがやっているのは、「何もしない」ということだけなのに。
 瑞己くんに電話をかけるとか、一年生の教室のほうまで行ってみるとか、そういう「何かをする」ことのほうが、すごくエネルギーを使いそうなものなのに。
 どうして?

〈そよ先輩、すみません。僕が気にさわることをしたんですよね? やっぱり、うっとうしかったですか? しつこくして、ごめんなさい〉

 とうとうこんなメッセージをもらってしまった。
 見るともなしに、スマホを見てしまう。何度も、何度も。でも、それだけだ。わたしは瑞己くんに返信しない。

***