宮 謙斗――通称ミヤケンは、この美風高校に通い始めてまだ浅い私でも認識している名前だった。
女好きの遊び人。特定の彼女は作らずに、隣を歩く女子は日によって違うという、生粋のチャラ男にしてモテ男子。
……とはいっても、私は本物のミヤケンをまだ見たことがない。
隣のクラスだけど、合同体育の授業には顔を出していなかったし、サボりも多いらしいので廊下で鉢合わせることもなかった。
だけど彼を知るなら、飽きもせず流れてくる噂を聞くだけで充分である。
そもそも……私は、ミヤケンとやらに興味も関心もない。
ただ、西棟の多目的室に鍵が掛かった原因を作った人物だというなら、すでに印象は最悪だった。