私がPTSDということは、担任の友林先生も保健室にいる養護教諭の先生も知っている。学校側には周知の事実だった。


 体調が思わしくない場合は、保健室に駆け込む許可は得ているとはいえ、毎回お邪魔するのは気まずい。

 そんなとき私は、西棟の多目的室を避難場所にしていた。
 理由が理由なのだから遠慮なんてしていられない、とは思うものの、保健室は私だけが使用する場所じゃない。

 ほかに具合が悪くなって利用する生徒だっている。そうなったときに鉢合わせするのが怖かった。


 だからこそ、べつの避難場所として、西棟の多目的室にはよく足を運んでいた。
 保健室よりもよっぽど静かで人の気配を感じないため、いつもお世話になっていたというのに。


「絶対にミヤケンだよ! ほら、よく授業サボって女の子を連れ込んでたって隣のクラスの子が言ってたし」

「だよね。わたしも聞いたよ。三年の先輩が、ミヤケンと西棟の多目的室で――」


 近くの席に座る女子生徒が口々に「ミヤケン」の話題を取り上げる。
 嫌でも耳に滑り込んでくる「ミヤケン」に関する卑猥な話に、めまいがした。


 西棟の多目的室が立ち入り禁止になった原因が、本当に「ミヤケン」とやらが関係しているのなら。

 私は「ミヤケン」に言いたい。
 せめてべつの場所で、そういうことはして欲しかったと。