「よし、後ろまでプリント回ったな。そこに書かれている通りだが、西棟の多目的室は完全に立ち入り禁止になった。昨日の職員会議で決まったから、破らないように」


 淡々とした口調の友林先生だったけど、それを聞いたクラスメイトたちはにやけていた。


「先生ー! それってもしかして、ミヤケンがやらかしちゃったとか?」
「そうそう。ここに書いてある"多目的室にて不適切行為の発覚"ってさ、絶対にミヤケンが女連れ込んでバレたんでしょ!」


 男子が冷やかし半分に質問をする。反対に女子は声を大にして言わないけれど、その顔は楽しげだ。
 友林先生は対応が面倒なのか、嘆息をこぼした。


(みや)かどうかなんて気にする必要ないだろ。とりあえず西棟の多目的室には鍵を掛けたからな。どっちにしろ出入りはできないぞ。はい、ホームルームはこれで終わり。さっさと一限目の準備しろよー」


 絶妙に一人の生徒の名前から注意を逸らした友林先生は、簡単に出席を取ると早々に教室を出ていった。
 
 明らかにつまらなそうな顔をしたクラスメイトたちも、すぐに「まあ、きっとミヤケンだろうな」と言って、友林先生に問いただすことはしなかった。


 そんな中、私は……配られたプリントを凝視して、その事実に内心嘆いていた。

 困る、本当に……困る。

 なぜなら西棟の多目的室は、私がよく訪れていた場所だったから。