朝のホームルームにあった連絡事項以外は、これといって特徴のない一日だった。

 友林先生による帰りのホームルームが終了すると同時に、放課後を告げるチャイムの音が鳴り響く。

 先週が掃除当番だった私は、ほかに教室に居残る理由はなく、すぐさま廊下へと出た。


 だけど、その足がぴたりと止まる。

 ああ、そうだ。もう、西棟の多目的室には入れないんだった。


 今日は、雨が降る日なのに。
 天気予報がアタリなら、そろそろ降り始めてもいい頃だと思う。

 母の迎えが来るまで、どこに身を潜ませよう。
 完全に一人になれる場所ならどこでもよかった。今まではそれが、西棟の多目的室だったというだけで。


 そう、考えていたとき。

 ――ポツリと、廊下の窓ガラスに落ちて鳴った水音に、背筋が粟立った。