「愚か。貴様の下らん遊びに付き合うつもりはない。とっとと去れ」
自分がこの座を降りる未来もそう遠くはない。
そうなった時、息子の花嫁にコイツが手を出そうものなら。
それが例え狐野家当主とて無事では済まないだろう。
嫉妬に狂った鬼神ほど恐ろしいものはない。
あの子の真相もいずれ世間に知れ渡る。
それでも白夜が彼女を守ろうと言うのならそこに口を出す義理はない。コイツが指を咥え大人しくしているとは思えないが、自分がここにいるうちは鬼頭家に手は出させない。
深夜は威圧を込めて視線を送る。
「ほんと君はつれないね。その余裕気な顔も実に不愉快。僕はそういうタイプが一番大嫌いなんだ。でも君がその座を下りれば次なる当主はあのガキ。せいぜい僕を楽しませろ。…ああ、最後に一つだけ君に忠告しておく」
「…」
「最近、術家の人間が裏で動いている。君達も警戒することだね」
「それはどっちが言っている」
「さあ~どっちかな。じゃあね、鬼頭君。鬼神のガキに宜しく」
その言葉を最後に狐野はモニターから姿を消した。
深夜は真っ黒になったモニターに溜息をつけば定例会議は幕を閉じた。
△▼△
何だろう…最近、体の調子が悪い。
時雨は自分の身に妙な違和感を感じていた。
もちろん体調には人一倍気を使っている。
最近は白蛇の加護もある。
だから隠世ではまず心配はいらないと思っていた。
「そういえば鳳魅さん。最近の白蛇さん、ここに来ると直ぐ蓮池の方に行くね」
「あ~時雨ちゃんも気づいてたか。あの池は生き物の体を癒す作用があるからね。な~んか最近になってからはあの子、池の中に入ったっきり中々出て来ないだろ?僕も心配だったんだよね~」
生き物にとって蓮の池はとても神聖な場所。
白蛇のような神獣には特に。
最近は白蛇があの池に籠りっきりのとこきて、時雨の体も不安定気味。
でもまだ重症ではない。
誰にも話してはいないけど。
「(お翠さんの件が解決したばかりなのに)」
彼女はその後、白夜から補佐としての役目を降ろされたと聞く。
でも白夜は時雨との約束を守り、殺すことはしなかった。
彼女も一から働き始めているようだから心配はいらないだろう。
一日時雨の部屋で寝たら体力も回復したようだし。
「お翠がお前の部屋使ってんなら今夜は寝るとこねぇな。あ、なら夫婦の契約ついでに俺と寝とく?」
な~んて、、、
下心丸出しの白夜からの提案には丁寧にお断りをさせていただいた。
本人は何故か凄く不満気だったけど。
「ねえ時雨ちゃん、最近体調とか大丈夫?」
「え、、あ…実は正直なところ少し不調ではあるかも」
「やっぱり!なんか可笑しいと思ったよ。本来なら蓮池はパワーが強いし使いすぎはよくないのに。あの子ったら一日中水の中に浸っているし。君の様子もいつもと違うし」
やっぱバレてたか。
流石、薬師してるだけある。
こんな些細な変化も見逃さないとは。
「でもまだ動けるし。これくらい許容範囲だから大丈夫だよ。久野家では気にせず働いてたし」
あの家に休むなんて概念はない。
大怪我や病気になったとしても、父達の関心が自分に向くことはなかった。仮に休んで一華の世話が出来なくなって、後で怒鳴られるのは嫌だったから無理にでも我慢していた。お陰で体力だけは自信がある。
「ここを久野家と一緒にしちゃ駄目。異能を持たない君の体はただでさえ僕の傍に居たら毒だ。加護の蛇は弱っているし。今の君は体に大ダメージだよ。ほらこっち来て!」
鳳魅は時雨の手を掴むと奥の部屋へ引っ張っていく。
通されたのは病院のベットが三つ並んだ医療室だった。
中に入ると病院特有のツーンとした薬品の臭いが鼻をかすめる。
「ほら、ここで少し横になって休んで。仕事のことは気にしなくていいから」
「ごめん…じゃあ少しだけ休ませてもらおうかな」
ベットに入って横になる。
どうして…なんでなんだろう。
なんで今になってこんなに体が安定しないのか。
「ここに来て色んなことがあったし。それが今になって体に出ているのかな?」
「それもあるだろうけど。でも神獣があそこまで弱っているのは珍しい」
「そうなの?でもあの子はまだ赤子だし。弱いのは当然じゃない?」
「赤子といっても五百年は生きている筈。赤子の神獣は僕らの寿命より遥かに格上だし」
え、あの見た目で五百年⁈
それってもはや赤ちゃんでもなんでもないじゃん!
生まれたばかりって聞いていたから本当に赤子なんだと思っていたのに。
「僕の勘が正しければ。あれはきっと…」
真剣な表情で何かを考え込む鳳魅。
時雨は不思議になってそれを見つめた。
「…いや、なんでもない。取り敢えず今はゆっくり休みな。また様子を見に来るからさ」
「うん…ありがと」
鳳魅が出ていくと部屋はシーンと静まり返り、居るのは時雨だけになった。
鳳魅さん、何を言いかけていたんだろ。
時雨は白蛇の様子を思い返す。
腕に巻き付く力も弱く目をつぶっていた。
考えてみれば白夜から世話の仕方を聞けていない。
もし自分のせいで白蛇が苦しんでいたとすれば、、、
「眠い」
疲れてるせいか頭が痛い。
天井を見上げれば意識が朦朧としてきて、目を閉じれば眠さに耐えきれずそのまま意識を手放した。
自分がこの座を降りる未来もそう遠くはない。
そうなった時、息子の花嫁にコイツが手を出そうものなら。
それが例え狐野家当主とて無事では済まないだろう。
嫉妬に狂った鬼神ほど恐ろしいものはない。
あの子の真相もいずれ世間に知れ渡る。
それでも白夜が彼女を守ろうと言うのならそこに口を出す義理はない。コイツが指を咥え大人しくしているとは思えないが、自分がここにいるうちは鬼頭家に手は出させない。
深夜は威圧を込めて視線を送る。
「ほんと君はつれないね。その余裕気な顔も実に不愉快。僕はそういうタイプが一番大嫌いなんだ。でも君がその座を下りれば次なる当主はあのガキ。せいぜい僕を楽しませろ。…ああ、最後に一つだけ君に忠告しておく」
「…」
「最近、術家の人間が裏で動いている。君達も警戒することだね」
「それはどっちが言っている」
「さあ~どっちかな。じゃあね、鬼頭君。鬼神のガキに宜しく」
その言葉を最後に狐野はモニターから姿を消した。
深夜は真っ黒になったモニターに溜息をつけば定例会議は幕を閉じた。
△▼△
何だろう…最近、体の調子が悪い。
時雨は自分の身に妙な違和感を感じていた。
もちろん体調には人一倍気を使っている。
最近は白蛇の加護もある。
だから隠世ではまず心配はいらないと思っていた。
「そういえば鳳魅さん。最近の白蛇さん、ここに来ると直ぐ蓮池の方に行くね」
「あ~時雨ちゃんも気づいてたか。あの池は生き物の体を癒す作用があるからね。な~んか最近になってからはあの子、池の中に入ったっきり中々出て来ないだろ?僕も心配だったんだよね~」
生き物にとって蓮の池はとても神聖な場所。
白蛇のような神獣には特に。
最近は白蛇があの池に籠りっきりのとこきて、時雨の体も不安定気味。
でもまだ重症ではない。
誰にも話してはいないけど。
「(お翠さんの件が解決したばかりなのに)」
彼女はその後、白夜から補佐としての役目を降ろされたと聞く。
でも白夜は時雨との約束を守り、殺すことはしなかった。
彼女も一から働き始めているようだから心配はいらないだろう。
一日時雨の部屋で寝たら体力も回復したようだし。
「お翠がお前の部屋使ってんなら今夜は寝るとこねぇな。あ、なら夫婦の契約ついでに俺と寝とく?」
な~んて、、、
下心丸出しの白夜からの提案には丁寧にお断りをさせていただいた。
本人は何故か凄く不満気だったけど。
「ねえ時雨ちゃん、最近体調とか大丈夫?」
「え、、あ…実は正直なところ少し不調ではあるかも」
「やっぱり!なんか可笑しいと思ったよ。本来なら蓮池はパワーが強いし使いすぎはよくないのに。あの子ったら一日中水の中に浸っているし。君の様子もいつもと違うし」
やっぱバレてたか。
流石、薬師してるだけある。
こんな些細な変化も見逃さないとは。
「でもまだ動けるし。これくらい許容範囲だから大丈夫だよ。久野家では気にせず働いてたし」
あの家に休むなんて概念はない。
大怪我や病気になったとしても、父達の関心が自分に向くことはなかった。仮に休んで一華の世話が出来なくなって、後で怒鳴られるのは嫌だったから無理にでも我慢していた。お陰で体力だけは自信がある。
「ここを久野家と一緒にしちゃ駄目。異能を持たない君の体はただでさえ僕の傍に居たら毒だ。加護の蛇は弱っているし。今の君は体に大ダメージだよ。ほらこっち来て!」
鳳魅は時雨の手を掴むと奥の部屋へ引っ張っていく。
通されたのは病院のベットが三つ並んだ医療室だった。
中に入ると病院特有のツーンとした薬品の臭いが鼻をかすめる。
「ほら、ここで少し横になって休んで。仕事のことは気にしなくていいから」
「ごめん…じゃあ少しだけ休ませてもらおうかな」
ベットに入って横になる。
どうして…なんでなんだろう。
なんで今になってこんなに体が安定しないのか。
「ここに来て色んなことがあったし。それが今になって体に出ているのかな?」
「それもあるだろうけど。でも神獣があそこまで弱っているのは珍しい」
「そうなの?でもあの子はまだ赤子だし。弱いのは当然じゃない?」
「赤子といっても五百年は生きている筈。赤子の神獣は僕らの寿命より遥かに格上だし」
え、あの見た目で五百年⁈
それってもはや赤ちゃんでもなんでもないじゃん!
生まれたばかりって聞いていたから本当に赤子なんだと思っていたのに。
「僕の勘が正しければ。あれはきっと…」
真剣な表情で何かを考え込む鳳魅。
時雨は不思議になってそれを見つめた。
「…いや、なんでもない。取り敢えず今はゆっくり休みな。また様子を見に来るからさ」
「うん…ありがと」
鳳魅が出ていくと部屋はシーンと静まり返り、居るのは時雨だけになった。
鳳魅さん、何を言いかけていたんだろ。
時雨は白蛇の様子を思い返す。
腕に巻き付く力も弱く目をつぶっていた。
考えてみれば白夜から世話の仕方を聞けていない。
もし自分のせいで白蛇が苦しんでいたとすれば、、、
「眠い」
疲れてるせいか頭が痛い。
天井を見上げれば意識が朦朧としてきて、目を閉じれば眠さに耐えきれずそのまま意識を手放した。



