美しい顔は私を捉えて離さない。
私の顔には自然と熱がこもっていく。
「見れば見るほどお前が愛おしくてたまんねぇ。好きだ。俺はずっと、お前だけを愛してる」
「ッ//」
あの時と同じ。
彼が私を名前で呼んだのはこれが二度目だ。
「歯止めがきかない。日に日にその思いは強くなってくんだ。俺から離れていかねぇように。俺から逃げらんねぇように。こんな契約してでもお前を繋ぎ止めてぇって。そう思うのは俺の我儘か?」
「白夜様…」
その言葉はとても甘く私の心に突き刺さる。
胸がドキドキと波打つ。
お互いの鼓動が近くでもハッキリと聞こえる。
我儘だなんて。
そんなこと一度たりとも思ったことなんてない。
本当はその言葉を誰よりも心待ちにしていたのは自分自身なのだから。
「…嬉しい」
「!!」
私もずっとずっと貴方が。
好きでたまらなかった。
この先どんなことが起きようとも。
貴方の隣で息していたい。
貴方と共にこれからを強く歩んでいきたい。
噓偽りのないその澄んだ瞳を見つめれば見つめるほど。
私の心は日に日に貴方へと溺れていくのだった。
「白夜様から先に私を縛り付けてくれただなんて。これで私は永遠に貴方のものになれました」
「…怒ってねぇのか?条件とはいえ、俺と契約で縛られた。お前は一生俺から離れられなくなったんだぞ?」
白夜様は驚くと私の顔を覗き込んでくる。
もしや私が怒るとでも思っていたのだろうか。
「怒ってなどおりません。私はここに渡って白夜様のお側で共に生きると。そう強く誓ったんです」
決して解けることのない永遠の契約で。
彼が私の為に使った最初で最後の契約。
これで私は二度と離れられない。
でもそれに嬉しがる私はきっと…。
「白夜様」
「?」
「私、白夜様が好きです」
どうしようもなく、この人じゃないと駄目な理由があったのかもしれない。
この人だって心がそう叫んでいる。
この人を愛してみたい。
同じくこの人に愛されたい。
きっとそれは、例え形に現れなくとも密かに思い続けてきた私なりの私情だったのだろう。
「今思えば初めてお会いした日からずっと。白夜様のことを忘れた日はありません。だからもう離れたくありません」
「時雨…」
「私も貴方を愛しています」
その言葉で白夜様は私をギュッと抱きしめた。
嬉しいとばかりに私のことを強く抱きしめる。
優しく頭を撫でてくれる。
初めて触れ合ったお互いの体越しには白夜様の匂いを強く感じることができる。
「どうやら俺達は両想いってことだな」
囁かれた声に私は静かに微笑む。
「ふふ、そのようです。これで私達は共犯。契約をした以上、一生離れられません。責任はしっかりとって下さいね?」
「は、上等だ。一生逃げらんねぇようにお前を閉じ込めてやる。覚悟しとけよ」
こんなにも私を好きでいてくれるだなんて。
私の存在意義をこの人は初めて認めてくれた。
なら私も素直に応えよう。
必ずこの人の横で幸せになってみせる。
どんなことがあろうと二人で乗り越えてみせる。
白夜様、ありがとうございます。
「あ、そうそう忘れるとこだった。これやる」
ふいに、白夜様は私から体を離すと懐から小さな箱を取り出した。
「遅れて悪かった。あの後やることが山積みで。中々、お前に渡す機会がなかった」
「これは?」
差し出された箱を開けて見てみれば入っていたのは、あの日妖都で立ち寄った店で私が見つけた椿の簪。
「これは真紅水晶という。隠世でしか採れない貴重な結晶石に椿から抽出された特別なエキスを混ぜ込んで出来るものだ。お守りにもなる」
「そんな高価なものを私に⁉受け取れません!」
「いいから貰っとけって。母親の形見でもあるんだろ?ならばせめて、形だけでもそれを持っとけ」
そう言えば、母上の私物は写真立て一つだけだった。
何か形に残る物の一つでもあればよかったのだが、それは叶わず結局は手元に何も残らなかった。
白夜様はそんな私の気持ちに気づいていたんだ。
「…ありがとうございます。大切に使わせて頂きます」
差し出された簪を大切に受け取る。
綺麗な簪…。
本当に生きた生花のようだ。
花びら一つ一つが透き通っていてガラスみたい。
手にとってかざせば、光を吸収するのかキラキラと輝いている。
「…現世に戻りてえ?」
「え?」
白夜様は重い口調でそう問いかけた。
「ここには急に来る羽目になったみてぇだし。もしかしたらお前の中にも何か向こうに心残りのものがあるんじゃねぇって」
心残りか…。
そう聞かれて思い浮かんだのは一つ。
「母上の葬儀ができていません。正直、本当に死んでいるのかさえ今も分からない。でもそうだというのなら、せめて自分の手で供養を行いたかった」
久野家では何も聞けず何も教えてはくれなかった。
聞こうにも父は私との接触を極力避けていたし。
見れば顔を歪め、煙たがられていた記憶しかない。
亡くなった母上の遺骨は何処にあるのか。
例え亡くなっていても、もう一度会いたくてたまらない。
「…分かった」
「白夜様?」
「直ぐにとは約束ができねぇ。でも、必ず会わせてやるから」
私の顔には自然と熱がこもっていく。
「見れば見るほどお前が愛おしくてたまんねぇ。好きだ。俺はずっと、お前だけを愛してる」
「ッ//」
あの時と同じ。
彼が私を名前で呼んだのはこれが二度目だ。
「歯止めがきかない。日に日にその思いは強くなってくんだ。俺から離れていかねぇように。俺から逃げらんねぇように。こんな契約してでもお前を繋ぎ止めてぇって。そう思うのは俺の我儘か?」
「白夜様…」
その言葉はとても甘く私の心に突き刺さる。
胸がドキドキと波打つ。
お互いの鼓動が近くでもハッキリと聞こえる。
我儘だなんて。
そんなこと一度たりとも思ったことなんてない。
本当はその言葉を誰よりも心待ちにしていたのは自分自身なのだから。
「…嬉しい」
「!!」
私もずっとずっと貴方が。
好きでたまらなかった。
この先どんなことが起きようとも。
貴方の隣で息していたい。
貴方と共にこれからを強く歩んでいきたい。
噓偽りのないその澄んだ瞳を見つめれば見つめるほど。
私の心は日に日に貴方へと溺れていくのだった。
「白夜様から先に私を縛り付けてくれただなんて。これで私は永遠に貴方のものになれました」
「…怒ってねぇのか?条件とはいえ、俺と契約で縛られた。お前は一生俺から離れられなくなったんだぞ?」
白夜様は驚くと私の顔を覗き込んでくる。
もしや私が怒るとでも思っていたのだろうか。
「怒ってなどおりません。私はここに渡って白夜様のお側で共に生きると。そう強く誓ったんです」
決して解けることのない永遠の契約で。
彼が私の為に使った最初で最後の契約。
これで私は二度と離れられない。
でもそれに嬉しがる私はきっと…。
「白夜様」
「?」
「私、白夜様が好きです」
どうしようもなく、この人じゃないと駄目な理由があったのかもしれない。
この人だって心がそう叫んでいる。
この人を愛してみたい。
同じくこの人に愛されたい。
きっとそれは、例え形に現れなくとも密かに思い続けてきた私なりの私情だったのだろう。
「今思えば初めてお会いした日からずっと。白夜様のことを忘れた日はありません。だからもう離れたくありません」
「時雨…」
「私も貴方を愛しています」
その言葉で白夜様は私をギュッと抱きしめた。
嬉しいとばかりに私のことを強く抱きしめる。
優しく頭を撫でてくれる。
初めて触れ合ったお互いの体越しには白夜様の匂いを強く感じることができる。
「どうやら俺達は両想いってことだな」
囁かれた声に私は静かに微笑む。
「ふふ、そのようです。これで私達は共犯。契約をした以上、一生離れられません。責任はしっかりとって下さいね?」
「は、上等だ。一生逃げらんねぇようにお前を閉じ込めてやる。覚悟しとけよ」
こんなにも私を好きでいてくれるだなんて。
私の存在意義をこの人は初めて認めてくれた。
なら私も素直に応えよう。
必ずこの人の横で幸せになってみせる。
どんなことがあろうと二人で乗り越えてみせる。
白夜様、ありがとうございます。
「あ、そうそう忘れるとこだった。これやる」
ふいに、白夜様は私から体を離すと懐から小さな箱を取り出した。
「遅れて悪かった。あの後やることが山積みで。中々、お前に渡す機会がなかった」
「これは?」
差し出された箱を開けて見てみれば入っていたのは、あの日妖都で立ち寄った店で私が見つけた椿の簪。
「これは真紅水晶という。隠世でしか採れない貴重な結晶石に椿から抽出された特別なエキスを混ぜ込んで出来るものだ。お守りにもなる」
「そんな高価なものを私に⁉受け取れません!」
「いいから貰っとけって。母親の形見でもあるんだろ?ならばせめて、形だけでもそれを持っとけ」
そう言えば、母上の私物は写真立て一つだけだった。
何か形に残る物の一つでもあればよかったのだが、それは叶わず結局は手元に何も残らなかった。
白夜様はそんな私の気持ちに気づいていたんだ。
「…ありがとうございます。大切に使わせて頂きます」
差し出された簪を大切に受け取る。
綺麗な簪…。
本当に生きた生花のようだ。
花びら一つ一つが透き通っていてガラスみたい。
手にとってかざせば、光を吸収するのかキラキラと輝いている。
「…現世に戻りてえ?」
「え?」
白夜様は重い口調でそう問いかけた。
「ここには急に来る羽目になったみてぇだし。もしかしたらお前の中にも何か向こうに心残りのものがあるんじゃねぇって」
心残りか…。
そう聞かれて思い浮かんだのは一つ。
「母上の葬儀ができていません。正直、本当に死んでいるのかさえ今も分からない。でもそうだというのなら、せめて自分の手で供養を行いたかった」
久野家では何も聞けず何も教えてはくれなかった。
聞こうにも父は私との接触を極力避けていたし。
見れば顔を歪め、煙たがられていた記憶しかない。
亡くなった母上の遺骨は何処にあるのか。
例え亡くなっていても、もう一度会いたくてたまらない。
「…分かった」
「白夜様?」
「直ぐにとは約束ができねぇ。でも、必ず会わせてやるから」