寒い、暗い。
頭がズキズキして意識が朦朧とする。
「あれ?私……何して」
気がつくとそこは暗いコンクリート状の床の上。
頭をつける形で倒れていた。
辺りは何も無く、ひんやりとした冷気にポタリと雨漏りが滴る音。まりで牢獄のようなその場所に時雨は身震いした。
「よお、起きたかい嬢ちゃん」
暗闇の中から聞こえる声。
それは段々と時雨の方に近づいて来れば、月明かりの下、ズラズラと姿を現したのは複数の巨大な妖達だった。
「悪いが嬢ちゃんには一働きしてもらうぜ」
「貴方達は誰?」
1「おらぁ達は人身売買を生業にしてる裏のもんだ。嬢ちゃん、あんた人間だろ?人間なんざ滅多にお目にかかれない目玉商品。あんたさえ売れば大儲け間違いなしだぜ」
2「頼まれた時は本当に人間か疑いもしたが。まさか本当に人間だったとはな。しかも若い女だ。新鮮な肉はうめぇ」
「ヒィ、、」
大きな体でトロールのような見た目の男達は時雨の二倍はありそうな巨体で囲むように見下ろしてくる。普段は鬼頭家から出ることがなく、隠世の知識がまったくない時雨からすれば恐ろしくて仕方なかった。体はブルブルと震え出す。
3「馬鹿野郎!食うんじゃねぇよ。コイツは大富豪向けの商品にするって言ってるだろ。出荷まで丁重に扱え」
2「なんだよ、人間なんざ滅多に見れねぇ個体だぞ。少しぐらい味見したとこでバレやしねぇよ」
一人が時雨の着物へ手を伸ばしてくる。
「いや!触らないで!」
手をかけられた瞬間、ごつごつとしたその手をはたき落とした。
2「チッ、手癖悪ぃな。大人しくしやがれ!」
1「テメェは俺達に売られたんだ。今更叫んだとこで誰も助けなんざ来やしねぇ。諦めろ」
男達は時雨の胸元を掴めば乱暴に着物を横へおし広げた。
「いや、嫌だ!お願いやめて!!」
怖い、早くここから逃げなければ!!
だが足は恐怖ですくみ動かない。
お願いだから動いて。
そう言い聞かせたが体は思うように動いてくれない。
その間にも妖達の手が迫ってくる。
「(嫌だ、誰か!お願い、誰か助けて!)」
怖い、誰か、誰か!!!!!
ふと、時雨の脳裏を横切った一人の人物。
「白夜様!白夜様、お願い助けて!!」
ただ只管、彼の名前を叫んだ。
お願い、私はここに居る。
お願いだから助けて!!
「白夜様!白夜様!」
ーードガッ!!
「「「!!」」」
その瞬間、辺りにけたたましい音が鳴り響いた。
見れば向こう側では重く施錠されていたドアが吹き飛ばされていくのが確認できた。
「おい、大丈夫か⁉」
刹那、砂ぼこりが立てば扉を蹴破るようにして中に入ってきた人物。ゆっくりとその姿が明るみになっていけば、そこにいた彼の姿に時雨は体の力が抜けていく。
1「て、てめぇは鬼頭家の⁉」
2「純血の鬼神が何故ここに⁈」
まさか白夜が来るとは思ってもみなかったのか、妖達は驚きが隠せないようだった。白夜は妖達の下で着物が少しはだけた様子の時雨を視界に捉えればその瞳を見開いた。そして次の瞬間、その体からは強い怒りの妖力を放つ。
「おいてめぇら…よくも人のもんに手を出してくれたな。当然殺される覚悟は出来てんだろうなぁ??」
激昂に満ちた顔で向かってくる白夜は下位の妖達がどうこうできる相手ではない。そんな彼の気配に妖達は恐怖で震え上がった。
1「ま、待ってくれ!コイツがあんたのもんだとは知らなかったんだ!!」
3「俺達はただ頼まれただけで!!」
「あ?知らねぇーよ。おい、こいつら連れてけ」
白夜が外に声を掛けると鬼頭家の護衛達が飛び出してくる。
暴れだす妖達を押さえつけ拘束するとあっという間に外へ連れ出してしまった。
「おい大丈夫か⁈」
白夜は時雨の元へ駆け寄れば慌てて体を起こす。
「怪我はねぇ……な。はぁぁ…」
安心した顔で溜息をつく白夜。
そして時雨の首元へ顔をうずめればギュッとそのまま抱きしめた。
「え、あ、あの//////」
何が起こっているんだ??
白夜様が私を抱きしめている?
突然の行為に驚いていれば白夜は静かに口を開いた。
「急に居なくなってすんげぇ心配した。さっきの件があってからのこれは流石の俺も身が持たねぇって。でもお前が無事で良かった」
「……ご心配をおかけしました」
こんなにも弱々しい姿は初めて見た。
抱きしめる力は強く、体は震えている。
その白くサラサラとした髪に触れてみれば思いのほかふわふわしていた。
何回か撫でていれば白夜はぐりぐりと頭を押し付けてくる。
これはもしや甘えているのか?
彼にそんな可愛い一面があったなんて。
さっきまでの怖さもつい忘れて笑ってしまった。
暫くすれば満足したのか白夜が顔を上げる。
「船に戻るぞ。歩けるか?」
「大丈夫です。あの、白夜様」
「あ?」
「その…助けに来てくれて、ありがとうございました」
「…オマエは俺の婚約者だ。ほら、早く出るぞ」
白夜は自分が着ていた羽織りを時雨にかければ手をとり歩き出す。
怖かった。
もし白夜様が助けに来てくれなかったら今頃…。
最悪の事態を想像するとびくりと震えた。
でも白夜様が助けに来てくれた。
本当に嬉しかった。
安心感を覚えて自然と顔がほころぶ。
自分の手を握る大きな背中。
そんな彼を見つめれば同じようにその手を握り返した。
頭がズキズキして意識が朦朧とする。
「あれ?私……何して」
気がつくとそこは暗いコンクリート状の床の上。
頭をつける形で倒れていた。
辺りは何も無く、ひんやりとした冷気にポタリと雨漏りが滴る音。まりで牢獄のようなその場所に時雨は身震いした。
「よお、起きたかい嬢ちゃん」
暗闇の中から聞こえる声。
それは段々と時雨の方に近づいて来れば、月明かりの下、ズラズラと姿を現したのは複数の巨大な妖達だった。
「悪いが嬢ちゃんには一働きしてもらうぜ」
「貴方達は誰?」
1「おらぁ達は人身売買を生業にしてる裏のもんだ。嬢ちゃん、あんた人間だろ?人間なんざ滅多にお目にかかれない目玉商品。あんたさえ売れば大儲け間違いなしだぜ」
2「頼まれた時は本当に人間か疑いもしたが。まさか本当に人間だったとはな。しかも若い女だ。新鮮な肉はうめぇ」
「ヒィ、、」
大きな体でトロールのような見た目の男達は時雨の二倍はありそうな巨体で囲むように見下ろしてくる。普段は鬼頭家から出ることがなく、隠世の知識がまったくない時雨からすれば恐ろしくて仕方なかった。体はブルブルと震え出す。
3「馬鹿野郎!食うんじゃねぇよ。コイツは大富豪向けの商品にするって言ってるだろ。出荷まで丁重に扱え」
2「なんだよ、人間なんざ滅多に見れねぇ個体だぞ。少しぐらい味見したとこでバレやしねぇよ」
一人が時雨の着物へ手を伸ばしてくる。
「いや!触らないで!」
手をかけられた瞬間、ごつごつとしたその手をはたき落とした。
2「チッ、手癖悪ぃな。大人しくしやがれ!」
1「テメェは俺達に売られたんだ。今更叫んだとこで誰も助けなんざ来やしねぇ。諦めろ」
男達は時雨の胸元を掴めば乱暴に着物を横へおし広げた。
「いや、嫌だ!お願いやめて!!」
怖い、早くここから逃げなければ!!
だが足は恐怖ですくみ動かない。
お願いだから動いて。
そう言い聞かせたが体は思うように動いてくれない。
その間にも妖達の手が迫ってくる。
「(嫌だ、誰か!お願い、誰か助けて!)」
怖い、誰か、誰か!!!!!
ふと、時雨の脳裏を横切った一人の人物。
「白夜様!白夜様、お願い助けて!!」
ただ只管、彼の名前を叫んだ。
お願い、私はここに居る。
お願いだから助けて!!
「白夜様!白夜様!」
ーードガッ!!
「「「!!」」」
その瞬間、辺りにけたたましい音が鳴り響いた。
見れば向こう側では重く施錠されていたドアが吹き飛ばされていくのが確認できた。
「おい、大丈夫か⁉」
刹那、砂ぼこりが立てば扉を蹴破るようにして中に入ってきた人物。ゆっくりとその姿が明るみになっていけば、そこにいた彼の姿に時雨は体の力が抜けていく。
1「て、てめぇは鬼頭家の⁉」
2「純血の鬼神が何故ここに⁈」
まさか白夜が来るとは思ってもみなかったのか、妖達は驚きが隠せないようだった。白夜は妖達の下で着物が少しはだけた様子の時雨を視界に捉えればその瞳を見開いた。そして次の瞬間、その体からは強い怒りの妖力を放つ。
「おいてめぇら…よくも人のもんに手を出してくれたな。当然殺される覚悟は出来てんだろうなぁ??」
激昂に満ちた顔で向かってくる白夜は下位の妖達がどうこうできる相手ではない。そんな彼の気配に妖達は恐怖で震え上がった。
1「ま、待ってくれ!コイツがあんたのもんだとは知らなかったんだ!!」
3「俺達はただ頼まれただけで!!」
「あ?知らねぇーよ。おい、こいつら連れてけ」
白夜が外に声を掛けると鬼頭家の護衛達が飛び出してくる。
暴れだす妖達を押さえつけ拘束するとあっという間に外へ連れ出してしまった。
「おい大丈夫か⁈」
白夜は時雨の元へ駆け寄れば慌てて体を起こす。
「怪我はねぇ……な。はぁぁ…」
安心した顔で溜息をつく白夜。
そして時雨の首元へ顔をうずめればギュッとそのまま抱きしめた。
「え、あ、あの//////」
何が起こっているんだ??
白夜様が私を抱きしめている?
突然の行為に驚いていれば白夜は静かに口を開いた。
「急に居なくなってすんげぇ心配した。さっきの件があってからのこれは流石の俺も身が持たねぇって。でもお前が無事で良かった」
「……ご心配をおかけしました」
こんなにも弱々しい姿は初めて見た。
抱きしめる力は強く、体は震えている。
その白くサラサラとした髪に触れてみれば思いのほかふわふわしていた。
何回か撫でていれば白夜はぐりぐりと頭を押し付けてくる。
これはもしや甘えているのか?
彼にそんな可愛い一面があったなんて。
さっきまでの怖さもつい忘れて笑ってしまった。
暫くすれば満足したのか白夜が顔を上げる。
「船に戻るぞ。歩けるか?」
「大丈夫です。あの、白夜様」
「あ?」
「その…助けに来てくれて、ありがとうございました」
「…オマエは俺の婚約者だ。ほら、早く出るぞ」
白夜は自分が着ていた羽織りを時雨にかければ手をとり歩き出す。
怖かった。
もし白夜様が助けに来てくれなかったら今頃…。
最悪の事態を想像するとびくりと震えた。
でも白夜様が助けに来てくれた。
本当に嬉しかった。
安心感を覚えて自然と顔がほころぶ。
自分の手を握る大きな背中。
そんな彼を見つめれば同じようにその手を握り返した。



