「あ…」
ああ…遂にこの時がきてしまった。
目の前が真っ暗だ。
視界がぼやければ絶望の色に染まっていく。
私は今、一体どんな顔をしているのだろう。
この人にだけは絶対に知られてはいけなかったのに。
隠世へ渡り、一週間とまだ満たない。
だがそんな僅かな時間でその秘密をあっけなく暴かれてしまった。
やはりその能力は本物だった。
人の上に立ち、強いカリスマ性を兼ね備えた千年に一度の逸材。逆に言えば知らなかったということの方が可笑しい。
「お、お許し下さい!」
気がつけば情けなく許しをこうていた。
恐らく私に異能が無いことは来た当初から感じ取っていたに違いない。それを敢えて黙秘していたのだ。
やはりここへ嫁いだのは間違いだった。
一華さんの身代わりとはいえ、やはり彼ほどの強い妖を相手に無能な私が嫁ぐ資格など。
これも時間の問題だった。
いずれこうなることは分かっていた。
せめてもの時間稼ぎをしていたに過ぎなかった。
その中で何とか運よく生きられれば。
知られることがないようにと。
ただそれだけを願って。
だがこれで私もお終いだ。
正体が知られた以上、必死に謝ったところで無事に済む話ではない。最悪の場合、両世界との間に亀裂を入れかねない事態へ事を発展させたかもしれない。
でもそれだけは何としても回避せねば!
自分はどうなってもいい。
私は彼へ頭を下げると必死になって謝った。
「許して頂けるだなんて思っておりません。仰る通り、私に久野家の異能はなく今回の件は鬼頭家との契約を裏切ったも同然の行為です」
「…」
「私は今後、いかなる処罰も覚悟しているつもりです。ですがどうかお願いです。現世の方達だけは!!」
「…」
白夜様は何も言わない。
このままでは非常にまずい。
どうすれば…どうすればいいの?
私はまた何の役にも立てない無能なの?
でも…。
当然といえば当然か。
強い妖力と千里の眼で来世を繫栄へと導く。
鬼神と称されるお方に私達は大変な過ちをしでかしてしまったのだ。
彼が許してくれる保証なんてない。
ならもう…私に出来ることなんて。
「(母上…申し訳ありません)」
私は絶望した顔で下を向くと母上の存在を思い出し、静かに心の中で謝った。
「…いつまでそうしてんの?」
頭上からは白夜様の声が聞こえた。
「早く頭を上げろよ」
「ッ」
怖い。
果たして私が頭を上げた時、彼は一体どんな顔をしているのだろう。
怒り?増悪?嫉み?恨み?
マイナスな答えしか出てこない。
だがいつまで考えていても仕方がない。
知られてしまった以上はもう隠しようがない。
意を決して頭を上げれば恐る恐る正面越しに彼を見た。
「は、なんつー顔してんだよ」
「!!」
それは怒りでも増悪でも嫉みでも恨みでもない。
ただ静かに私を捉える姿が…。
「(美しい)」
それだけだった。
憐みにも憂いにも表現できない。
心からの尊敬の意を込めたかのような。
でも今にも泣き出しそうな顔。
私以外、他は全く視界に入らないとでも言いたげに。
白夜様はただ真っ直ぐに私だけを見つめていた。
「ふっ、そんなに俺が怖い?」
「白夜様…私は…」
「悪かった」
「え?」
彼はそう言って私へ頭を下げる。
まさか自分が謝られる立場だとは予想しておらず、私は啞然として彼を見つめた。
ああ…遂にこの時がきてしまった。
目の前が真っ暗だ。
視界がぼやければ絶望の色に染まっていく。
私は今、一体どんな顔をしているのだろう。
この人にだけは絶対に知られてはいけなかったのに。
隠世へ渡り、一週間とまだ満たない。
だがそんな僅かな時間でその秘密をあっけなく暴かれてしまった。
やはりその能力は本物だった。
人の上に立ち、強いカリスマ性を兼ね備えた千年に一度の逸材。逆に言えば知らなかったということの方が可笑しい。
「お、お許し下さい!」
気がつけば情けなく許しをこうていた。
恐らく私に異能が無いことは来た当初から感じ取っていたに違いない。それを敢えて黙秘していたのだ。
やはりここへ嫁いだのは間違いだった。
一華さんの身代わりとはいえ、やはり彼ほどの強い妖を相手に無能な私が嫁ぐ資格など。
これも時間の問題だった。
いずれこうなることは分かっていた。
せめてもの時間稼ぎをしていたに過ぎなかった。
その中で何とか運よく生きられれば。
知られることがないようにと。
ただそれだけを願って。
だがこれで私もお終いだ。
正体が知られた以上、必死に謝ったところで無事に済む話ではない。最悪の場合、両世界との間に亀裂を入れかねない事態へ事を発展させたかもしれない。
でもそれだけは何としても回避せねば!
自分はどうなってもいい。
私は彼へ頭を下げると必死になって謝った。
「許して頂けるだなんて思っておりません。仰る通り、私に久野家の異能はなく今回の件は鬼頭家との契約を裏切ったも同然の行為です」
「…」
「私は今後、いかなる処罰も覚悟しているつもりです。ですがどうかお願いです。現世の方達だけは!!」
「…」
白夜様は何も言わない。
このままでは非常にまずい。
どうすれば…どうすればいいの?
私はまた何の役にも立てない無能なの?
でも…。
当然といえば当然か。
強い妖力と千里の眼で来世を繫栄へと導く。
鬼神と称されるお方に私達は大変な過ちをしでかしてしまったのだ。
彼が許してくれる保証なんてない。
ならもう…私に出来ることなんて。
「(母上…申し訳ありません)」
私は絶望した顔で下を向くと母上の存在を思い出し、静かに心の中で謝った。
「…いつまでそうしてんの?」
頭上からは白夜様の声が聞こえた。
「早く頭を上げろよ」
「ッ」
怖い。
果たして私が頭を上げた時、彼は一体どんな顔をしているのだろう。
怒り?増悪?嫉み?恨み?
マイナスな答えしか出てこない。
だがいつまで考えていても仕方がない。
知られてしまった以上はもう隠しようがない。
意を決して頭を上げれば恐る恐る正面越しに彼を見た。
「は、なんつー顔してんだよ」
「!!」
それは怒りでも増悪でも嫉みでも恨みでもない。
ただ静かに私を捉える姿が…。
「(美しい)」
それだけだった。
憐みにも憂いにも表現できない。
心からの尊敬の意を込めたかのような。
でも今にも泣き出しそうな顔。
私以外、他は全く視界に入らないとでも言いたげに。
白夜様はただ真っ直ぐに私だけを見つめていた。
「ふっ、そんなに俺が怖い?」
「白夜様…私は…」
「悪かった」
「え?」
彼はそう言って私へ頭を下げる。
まさか自分が謝られる立場だとは予想しておらず、私は啞然として彼を見つめた。