白鬼の封印師

まさか謝罪されるとは思わず、時雨はビックリして白夜をとらえる。向こうは申し訳なさそうな顔で体からはオーラを消せば、辺りは明るい空間へと戻った。

「白夜様?どうして」
「知ってた」
「え、」
「…お前に異能がないことは、会った時から気づいていた」

やっぱりそうだったのか。
白夜様の瞳は千里眼。
相手に異能があるかないかなんて一目で感じ取れて当然。
だが時雨は疑問に感じた。

「それを知っていながらなぜ…何も仰っしゃっては下さらなかったではないですか!」
「初めはとっとと告発してお前を追い出すつもりだったさ。正直この結婚には乗り気じゃなかったし。俺を鬼頭家に縛り付ける道具でしかないと思って嫌悪視していたからな。鬼頭家に迎え入れられたお前が憎らしかった」
「………」
「だがなにもお前に限った話じゃない。お前と会うまでにも何度か縁談の機会はあった。俺に媚び売る女や自分の娘や孫を差し出す奴らにほとほと呆れていた。そんな時、現世で異能を持つ娘が生まれたと知らされた」

あ、それ多分一華さんのことだ。
きっと鬼頭家には前々から彼女の存在が知らされていて、今回は白夜様の花嫁にと申し込みが来た訳か。結局、隠世を良く思わない術家にとって無能以上に最高な生贄はいないと。そうして自分が嫁がされた。

「鬼頭家に迎えた人間の話は聞いていた…が、俺にとって良い印象は無かった。だからその女のことも実際は興味なんてなかったし、適当にあしらうつもりだった。だが見合い当日、来た奴を見て驚いた。そいつには異能が無かったからだ」

白夜は自身の瞳を指さす。

「異能の有無はこの瞳がないと外からは判断できねぇ。あの時親父は分かっていないようだったが俺の目は誤魔化せない。聞いていた話と違ったことが俺を更にイラつかせた」
「ではどうして…」
「だが一方で興味があった。異能を持たず、俺にも見捨てられて。その身でどう生きていくつもりなのか。泣いて許しをこうのか、鬼頭家から逃れ野垂れ死にするのか。高みの見物でもしてやろうかと単なる好奇心材料に変わった」

それはつまり…自分が無能であるのを初めから知っておきながら見て見ぬふりをしていたこと。そして今後の行く末を見物し、それは同時に白夜様の中でこの身がどうなろうと初めからどうでも良かったってこと……。

「だがお前が選んだのはそのどちらでも無かった」
「え」
「鳳魅のいるあの場所は特殊なんだ。鬼頭家が特別に張った結界領域に位置していてその身を隠す。俺や親父でも無い限り、彼に会うことは不可能の筈だった。なのにお前は違った」
「それは…どうしてだろう」
「いつものように鳳魅んとこに行ってお前を見た時は驚いた。何故異能も持たない人間がアイツの居場所を知ることが出来たのか」

そう言われてもな…自分でもよく分からない。
ただ足の赴くまま。
気づいたらあそこで彼と会ったとしか説明のしようがない。
本当に単なる偶然。

「そんでソイツの存在を思い出したんだ」
「あ、白蛇さん」

白夜が指差す方向には時雨の腕に巻き付く白蛇。
着物の裾から覗く白い体は奥の方へ引っ込んでしまった。

「ソイツは何日か前、俺の部屋に入ってきたお気に入りだった。よく見れば神獣だし。上手く育てて眷属にするつもりが、ある日を境に居なくなって探していたとこだった」

時雨が見つけた時、白蛇はボロボロだった。
とても弱りきってはいたものの、それは白夜の元に行った後の出来事ということだろうか。

「神獣は神の使い。そう簡単に他人と契約なんてしない。鳳魅の元に居たお前の存在。そんなお前にソイツが契約を結んだ。俺はその時に何かを確証した」
「確証ですか?」
「問い詰めた俺に臆することなく、お前は自分の意志を述べた。そこに他の奴とは違う異質を感じ取った。ソイツが気に入ったぐらいだ。お前がここに来たのも偶然ではないのかもな、、、」