白鬼の封印師

「あ、、、」

遂にこの時がきてしまったんだ。
目の前が真っ暗になった。
会話が何も入ってこない。
視界がぼやけて絶望の色に染まっていった。
時雨は今、自分がどんな顔をしているのか分からなかった。
絶対に知られてはいけなかったのに。
隠世へ渡って一週間と経ってない。
こんなあっさり…終わりを迎えることになるなんて。
隠し通せる筈だなんて、彼の前では甘すぎたのだ。
やはりその能力は本物。
妖の上に立ち、強いカリスマ性と力を兼ね備えた千年に一度の逸材。
逆に言えば知らなかったということの方が可笑しな話。

「お許し下さい!」

時雨は頭を下げた。
怖い、怖い怖い怖い、、、。
顔からは汗が滴り畳に落ちた。
きっと異能が無いことは来た当初から感じ取っていたに違いない。
それを敢えて黙秘していたのならば、、、
妹の身代わりとはいえ、やはり彼ほどの強い妖を相手に無能な自分なんかが到底太刀打ちできる筈もなかった。
時間の問題だった。
いずれこうなることなんて分かっていたのに。
それでも運よく生きられればいいなんて、知られないように、気づかれないように、極力は彼に近づかないようにしていた筈が気づいたら自分から行っていた。
このままでは久野家も危ない。

「仰る通り…私に久野家の異能はありません。今回の件は鬼頭家との契約を裏切ったも同然の行為」
「……ほお。そんで?お前はこの件をどう落とし前つけてくれんの?」

威圧的な態度の白夜。
その瞳は冷酷に染まり、どす黒いオーラも出ている。
時雨はブルブルと震える。

「いかなる処罰も覚悟しています。私がやったことは大罪。ですがどうかお願いです。現世に生きる皆だけは!!」
「…」

白夜からは何も返ってこない。
その代わりにオーラは不機嫌さを増す。
このままでは非常にまずい。
どうすれば、どうすればいいの?
自分はまた何もできない役立たずなの?
でも…当然といえば当然なのかな。
身代わりとして送り込まれた生贄だけど騙したのは事実。
彼が許してくれる保証なんてない。
ならもう、、、出来ることなんて。
お母さん、ごめんなさい。
時雨はもう全てを諦めれば、次に与えられる恐怖に備えて目を閉じた。

「いつまでそうしてんの?」

だが頭上からは白夜の声が聞こえれば、頭を上げるよう促される。
恐る恐る、顔を上げれば何故か白夜は笑っていた。
悲しそうに。
泣きそうな顔を浮かべながら。

「はは、なんつー顔してんだよ」
「白夜様…どうして、、」

怒りでも憎しみでもなかった。
ただ一言。
それは美しかった。
真っ直ぐに自分を見つめるその瞳から目が離せなかった。

「酷い顔(笑)。そんなに俺が怖いか?」
「わ、私は、、、」
「悪かった」
「!!」

白夜はそう言って謝った。