私が店内で着物を眺めること数分。
「悪ぃ、待った?」
白夜様は女将さんとの話が終わったのか奥座敷から出てくる。
「いえ、大丈夫です」
「なら行くぞ。世話になったな女将」
「今後ともご贔屓に」
白夜様へお辞儀をする女将さんに私もペコリとお辞儀をして外へ出る。
「よし!なら取り敢えずは良さそうな店を見て回るぞ」
白夜様の後に続いてその後は色んな店を見て回る。
工芸品や郷土玩具、展示店など隠世でしか味わえない多くの販売店に見ていて飽きることはなかった。
「疲れたか?ここ入ったら次に飯食って休憩しよう」
彼の言葉に私は頷く。
花吹きと書かれたこのお店はどうやら小物雑貨品店だった。
「可愛い」
店内には和をモチーフにした色んな雑貨品が多く販売されており、多くの女性客で賑わっていた。カップル連れの妖の姿も見受けられ自然とそちらにも目がいく。
「あ、椿」
暫く店内を見て回っていると簪コーナーで売られていた簪に目がとまる。
生花のように美しい造りに思わず見とれてしまう。
「(綺麗…)」
と、ふいに上からは影が差し込む。
驚いて見てみれば、白夜様が後ろからその様子を眺めていたことに気が付く。
「脅かさないでください!」
「それが欲しいなら俺が買ってやる」
そう言ってこちらに手を伸ばすので、私は慌てて簪を元の位置へ戻した。
「け、結構です!」
「なんだよ、人が折角買ってやろうとしてんのに」
「何が目的ですか?もしやそれをだしに私との契約規約を厳しくするとか」
「…お前は俺を何だと思ってんだよ」
ピキリと血管を額へとにじませた白夜様に私は背中を向けると店外へ出る。
「結構です。只より怖い物はないと言いますから」
「け、相変わらず俺の奥さんは欲がねぇことで」
呆れた顔で白夜も後に続く。
「飯にするぞ」と言うので言われるがままその後をついていく。
「ここだ」
「鬼の念仏?」
そう書かれた店の前までやって来ると白夜様は中へと入っていく。
「これはこれは!お待ちしておりました若様。どうぞこちらへご案内致します」
中へと入ると亭主さんらしき人が現れ私達を奥の部屋へと案内していく。通された部屋はこじんまりとした一室で静かな空間だった。
「慣れないせいか疲れただろう。ここで暫く休んでから屋敷へ帰ることにする」
白夜様は私の座った向かい側の席に腰を下ろす。
「どうだ、初めての妖都観光は?」
「凄く楽しかったです!こうして誰かと出かけたのは生まれて初めてのことでしたから」
「…そ」
「?」
「いや、なんでもない」
白夜様はどこか遠くを見るような目で私を見つめる。
ああ、またこの目。
彼は最近、私から何かを感じ取っているのか静かにこちらを見つめてくることが多くなった。
「失礼致します。食前酒をお持ち致しました」
そう外から声が聞こえ、ガラリと障子扉が開かれると中居さんが食前酒を持って入ってくる。
「(あ、どうしよ。私、まだ未成年だ!)」
自分がお酒を飲めない歳であることを忘れていた。
果たしてこの状況をどう切り抜けようか。
「心配すんな。お前のはただのジュースだ」
白夜様は初めからその考えに気づいていたのかそう告げる。
「あ、ありがとうございます…」
私は恥ずかしくなって思わず俯いた。
「ふふ、若様も意地悪なお方ですね」
中居さんは私へ憐みの目を向ければ白夜様を軽く責め立てる。
「ご挨拶が遅れましたが。私、この鬼の念仏で女将をしております、お京と申します。この度は本店にご来店頂きまして、誠にありがとうございます」
丁寧な挨拶と共にお京さんは一礼した。
中居さんだと思っていた彼女は女将さんだったのだ。
え、女将さんてもっとこう年配の、、、。
いや、お京さんも妖だ。
美しく若い姿を何百年と保っているのだ。
年齢を言われるまでは女将さんだとは誰も気づかないだろう。
「おい、お前何か失礼なこと考えてねぇか?」
「い、いえ!そんなつもりは」
「ほんとかよ」
まずい、白夜様は感が鋭すぎる。
疑い深くこちらを見てくる顔から慌てて目を逸らす。
まさか先回りしてその眼で私の考えを未来予知していただなんて言わないよね?
「ふふ。若様、もしやこの方が例の?」
「ああ。久野時雨、俺の婚約者だ」
「まあ、やっぱり!来た時からそうではないかとは思ってはいたんです。こうして改めて拝見致しますと、なんとも可愛らしいお嬢様ですね」
文月さん同様、お京さんもニコリと私にそう言って笑いかけた。「お食事の方をお持ち致しますね」と笑顔のまま言えば一礼して部屋を出ていった。
「悪ぃ、待った?」
白夜様は女将さんとの話が終わったのか奥座敷から出てくる。
「いえ、大丈夫です」
「なら行くぞ。世話になったな女将」
「今後ともご贔屓に」
白夜様へお辞儀をする女将さんに私もペコリとお辞儀をして外へ出る。
「よし!なら取り敢えずは良さそうな店を見て回るぞ」
白夜様の後に続いてその後は色んな店を見て回る。
工芸品や郷土玩具、展示店など隠世でしか味わえない多くの販売店に見ていて飽きることはなかった。
「疲れたか?ここ入ったら次に飯食って休憩しよう」
彼の言葉に私は頷く。
花吹きと書かれたこのお店はどうやら小物雑貨品店だった。
「可愛い」
店内には和をモチーフにした色んな雑貨品が多く販売されており、多くの女性客で賑わっていた。カップル連れの妖の姿も見受けられ自然とそちらにも目がいく。
「あ、椿」
暫く店内を見て回っていると簪コーナーで売られていた簪に目がとまる。
生花のように美しい造りに思わず見とれてしまう。
「(綺麗…)」
と、ふいに上からは影が差し込む。
驚いて見てみれば、白夜様が後ろからその様子を眺めていたことに気が付く。
「脅かさないでください!」
「それが欲しいなら俺が買ってやる」
そう言ってこちらに手を伸ばすので、私は慌てて簪を元の位置へ戻した。
「け、結構です!」
「なんだよ、人が折角買ってやろうとしてんのに」
「何が目的ですか?もしやそれをだしに私との契約規約を厳しくするとか」
「…お前は俺を何だと思ってんだよ」
ピキリと血管を額へとにじませた白夜様に私は背中を向けると店外へ出る。
「結構です。只より怖い物はないと言いますから」
「け、相変わらず俺の奥さんは欲がねぇことで」
呆れた顔で白夜も後に続く。
「飯にするぞ」と言うので言われるがままその後をついていく。
「ここだ」
「鬼の念仏?」
そう書かれた店の前までやって来ると白夜様は中へと入っていく。
「これはこれは!お待ちしておりました若様。どうぞこちらへご案内致します」
中へと入ると亭主さんらしき人が現れ私達を奥の部屋へと案内していく。通された部屋はこじんまりとした一室で静かな空間だった。
「慣れないせいか疲れただろう。ここで暫く休んでから屋敷へ帰ることにする」
白夜様は私の座った向かい側の席に腰を下ろす。
「どうだ、初めての妖都観光は?」
「凄く楽しかったです!こうして誰かと出かけたのは生まれて初めてのことでしたから」
「…そ」
「?」
「いや、なんでもない」
白夜様はどこか遠くを見るような目で私を見つめる。
ああ、またこの目。
彼は最近、私から何かを感じ取っているのか静かにこちらを見つめてくることが多くなった。
「失礼致します。食前酒をお持ち致しました」
そう外から声が聞こえ、ガラリと障子扉が開かれると中居さんが食前酒を持って入ってくる。
「(あ、どうしよ。私、まだ未成年だ!)」
自分がお酒を飲めない歳であることを忘れていた。
果たしてこの状況をどう切り抜けようか。
「心配すんな。お前のはただのジュースだ」
白夜様は初めからその考えに気づいていたのかそう告げる。
「あ、ありがとうございます…」
私は恥ずかしくなって思わず俯いた。
「ふふ、若様も意地悪なお方ですね」
中居さんは私へ憐みの目を向ければ白夜様を軽く責め立てる。
「ご挨拶が遅れましたが。私、この鬼の念仏で女将をしております、お京と申します。この度は本店にご来店頂きまして、誠にありがとうございます」
丁寧な挨拶と共にお京さんは一礼した。
中居さんだと思っていた彼女は女将さんだったのだ。
え、女将さんてもっとこう年配の、、、。
いや、お京さんも妖だ。
美しく若い姿を何百年と保っているのだ。
年齢を言われるまでは女将さんだとは誰も気づかないだろう。
「おい、お前何か失礼なこと考えてねぇか?」
「い、いえ!そんなつもりは」
「ほんとかよ」
まずい、白夜様は感が鋭すぎる。
疑い深くこちらを見てくる顔から慌てて目を逸らす。
まさか先回りしてその眼で私の考えを未来予知していただなんて言わないよね?
「ふふ。若様、もしやこの方が例の?」
「ああ。久野時雨、俺の婚約者だ」
「まあ、やっぱり!来た時からそうではないかとは思ってはいたんです。こうして改めて拝見致しますと、なんとも可愛らしいお嬢様ですね」
文月さん同様、お京さんもニコリと私にそう言って笑いかけた。「お食事の方をお持ち致しますね」と笑顔のまま言えば一礼して部屋を出ていった。