一体、白夜様は何をお考えなのだろうか。
その後、食事が済むといつものように鳳魅さんの所へ行った。ことの経由を聞いてみるも、鳳魅さんは楽しんでおいでとニヤニヤしながら言うだけで全くもって話にならなかった。
その日は一日、気分も晴れることはなく憂鬱な気分で迎えた約束の時間。
突如、お香さんを始めとした数人の使用人達が部屋までやってくれば、意味も分からず固まる私を別室へと連れ出す。中は試着室となっており、和服から洋服、最新のメイク道具までなんでも揃っていた。
「さあ時雨様、覚悟は宜しいですか?」
気合いが入りまくりのお香さんは腕捲りをするとそう尋ねてくる。
「いや…もう何が何だか」
「時雨様、今回はこちらのお召し物をご試着なさいませ」
「!わぁ」
使用人の一人が持ってきたのは黒い生地をベースに赤と白の大きな椿が咲き誇る美しい着物だった。
主役となる椿の花芯は金色。
そんな椿達の背景にはほんのりと虹色に色づいた葉が描かれている。
「帯と帯飾りはこちらに」
そう言って別に差し出されたのは、水色と白の縞模様柄の中央に赤い椿が描かれた帯と金色の紐状の帯飾り。
そのどれもが一級品のものばかりで開いた口が塞がらない。
「す、凄い…。こんなに高価な着物、本当に私なんかが着てもいいのですか?」
「勿論です!この着物は若様が時雨様にと、見立てたものなんですから」
「白夜様が私に⁈」
「はい。先程、こちらを時雨様にとお渡しになられたんです。本当に時雨様は愛されていますね!」
白夜様が私に。
でもどうして、、
どうして私が椿を好きだと分かったの?
この花は私の亡き母上が好きだった忘れ形見の花。
白夜様には話していない。
なのに一体、どうやって…!
「(あ、もしや白夜様は千里眼を?)」
私は彼の持つ千里眼の存在を思い出す。
あの帰り際、母上の話をした際にその瞳を使ったと考えれば。
「白夜様…」
「良かったですね時雨様。さあ支度にかかりましょ!」
静かに頷いた私にお香さん達はせっせと支度を始めていく。
メイクは自然なナチュラルに。
ショートボブの髪は両サイドが綺麗に編み込まれピンでとめられていく。
出来上がった自分の姿を鏡で確かめてみる。
「仕上がりはどうですか?」
「凄い…」
使用人として暮らし、質素な着物と生活しか送ってこなかった者とは思えない。今の鏡に映る自分の姿がまるで別人に思えて見とれてしまう。
「終わったか?」
「白夜様!」
私の支度が終わるのとほぼ同時に扉が開かれると白夜様が入ってきた。
「まあ若様!ちょうど今しがた、時雨様の準備が終わったところです」
お香さんはニヤニヤと笑えば私を彼の前へと差し出した。
「…ど、どうでしょうか」
「!……」
彼へ自分の姿を見せてみる。
白夜様はそんな私を見て、一瞬その綺麗な瞳を見開けば直ぐいつもの顔に戻った。
そして黙り込むとじっと私を観察する。
「…まあ、、、悪くないんじゃね?」
そう言いそっぽを向く白夜様は心なしか顔が赤い。
「白夜様?」
「行くぞ」
そのまま部屋を出て行ってしまう彼をポカンと見つめる。
「ふふ、時雨様があまりにもお美しいので若様は照れておいでなのですよ」
お香さんは可笑しそうに笑った。
「はあ…」
今の何処に照れる要素があったのかはよく分からないが。私も急いで後を追うようにして部屋を出た。
その後、食事が済むといつものように鳳魅さんの所へ行った。ことの経由を聞いてみるも、鳳魅さんは楽しんでおいでとニヤニヤしながら言うだけで全くもって話にならなかった。
その日は一日、気分も晴れることはなく憂鬱な気分で迎えた約束の時間。
突如、お香さんを始めとした数人の使用人達が部屋までやってくれば、意味も分からず固まる私を別室へと連れ出す。中は試着室となっており、和服から洋服、最新のメイク道具までなんでも揃っていた。
「さあ時雨様、覚悟は宜しいですか?」
気合いが入りまくりのお香さんは腕捲りをするとそう尋ねてくる。
「いや…もう何が何だか」
「時雨様、今回はこちらのお召し物をご試着なさいませ」
「!わぁ」
使用人の一人が持ってきたのは黒い生地をベースに赤と白の大きな椿が咲き誇る美しい着物だった。
主役となる椿の花芯は金色。
そんな椿達の背景にはほんのりと虹色に色づいた葉が描かれている。
「帯と帯飾りはこちらに」
そう言って別に差し出されたのは、水色と白の縞模様柄の中央に赤い椿が描かれた帯と金色の紐状の帯飾り。
そのどれもが一級品のものばかりで開いた口が塞がらない。
「す、凄い…。こんなに高価な着物、本当に私なんかが着てもいいのですか?」
「勿論です!この着物は若様が時雨様にと、見立てたものなんですから」
「白夜様が私に⁈」
「はい。先程、こちらを時雨様にとお渡しになられたんです。本当に時雨様は愛されていますね!」
白夜様が私に。
でもどうして、、
どうして私が椿を好きだと分かったの?
この花は私の亡き母上が好きだった忘れ形見の花。
白夜様には話していない。
なのに一体、どうやって…!
「(あ、もしや白夜様は千里眼を?)」
私は彼の持つ千里眼の存在を思い出す。
あの帰り際、母上の話をした際にその瞳を使ったと考えれば。
「白夜様…」
「良かったですね時雨様。さあ支度にかかりましょ!」
静かに頷いた私にお香さん達はせっせと支度を始めていく。
メイクは自然なナチュラルに。
ショートボブの髪は両サイドが綺麗に編み込まれピンでとめられていく。
出来上がった自分の姿を鏡で確かめてみる。
「仕上がりはどうですか?」
「凄い…」
使用人として暮らし、質素な着物と生活しか送ってこなかった者とは思えない。今の鏡に映る自分の姿がまるで別人に思えて見とれてしまう。
「終わったか?」
「白夜様!」
私の支度が終わるのとほぼ同時に扉が開かれると白夜様が入ってきた。
「まあ若様!ちょうど今しがた、時雨様の準備が終わったところです」
お香さんはニヤニヤと笑えば私を彼の前へと差し出した。
「…ど、どうでしょうか」
「!……」
彼へ自分の姿を見せてみる。
白夜様はそんな私を見て、一瞬その綺麗な瞳を見開けば直ぐいつもの顔に戻った。
そして黙り込むとじっと私を観察する。
「…まあ、、、悪くないんじゃね?」
そう言いそっぽを向く白夜様は心なしか顔が赤い。
「白夜様?」
「行くぞ」
そのまま部屋を出て行ってしまう彼をポカンと見つめる。
「ふふ、時雨様があまりにもお美しいので若様は照れておいでなのですよ」
お香さんは可笑しそうに笑った。
「はあ…」
今の何処に照れる要素があったのかはよく分からないが。私も急いで後を追うようにして部屋を出た。