一体、白夜は何を考えているのか。
鳳魅の元へ向かえば、その日一日は気持ちが上の空だった。
そんあ時雨を不思議に思い、鳳魅に理由を聞かれればデートのことを相談してみる。すると向こうはニヤニヤと笑いながら「楽しんでおいで♡」と言うだけだった。
本当に白夜様は私とデートをしたいのかな?
そんな曖昧な思いで迎えた約束の日。
突如、部屋の扉が開けばお香を始めとした数人の使用人達が入室して来るので時雨はギョっとした。腕を掴まれればそのまま何も言わずに別室へ連れてかれる。中は和服から洋服、最新のメイク道具やエステまでなんでも揃っていた。
「さあ時雨様、覚悟は宜しいですか?」
気合いを入れたお香が腕捲りしながら尋ねてくる。
「いやもう…何が何だか。お香さん、これは一体、、、」
「今回はデートプランに合わせて色々な計画を練って参りました。まずはこちらのお召し物をご試着なさいませ」
使用人が持ってきた黒い生地をベースとした赤と白の大きな椿が咲き誇る美しい和柄の着物。
主役となる椿の花芯は金色。
背景にはほんのりと虹色に色づいた葉。
帯と帯飾りも可愛かった。
水色と白の縞模様柄に中央には赤い椿が描かれた帯。
金色の紐状の帯飾り。
全てが一級品で時雨も見惚れてしまう。
「凄い…こんな高価な着物。でも本当に私なんかが着ていいんですか?」
「勿論です!この着物は若様が見立てたものですよ」
「白夜様が⁈」
「先ほどこちらを時雨様にと。わざわざ訪ねて来られたのですよ。本当に時雨様は愛されていますね!」
白夜様が私に?
でもどうして、どうして私が椿を好きなのを分かったんだろう。
この花は亡き母が好きだった忘れ形見の花なのだ。
『お母さん!椿がお花を咲かせました』
『もうそんな季節なのね。今年は満開で綺麗だこと』
寒椿の咲き乱れた中庭。
はしゃぐ子供はまだ幼く、テラス席にはにこやかに腰かける母親。
白夜にこの話をした覚えはない。
それでもこうして用意された椿の着物は果たして偶然と言えようか。
もしや千里眼を???
時雨は彼の持つ千里眼の存在を思い出した。
白蛇の話でもそうだったが、言おうとしていた事を的確に指摘してくる彼の行動はもしや時雨の好きな花を読み解いたのではないか。
それなら幾分か納得はいく。
「良かったですね時雨様。さあ支度に取りかかりますよ!」
お香達はせっせと支度に取りかかれば、時雨はされるがままだった。
手始めにお風呂。
その後はエステと美容。
メイクに衣装合わせ。
長かった髪も洗う時間が勿体ないと久野家に来て短く切ってしまった。少し伸びてショートボブな髪には両サイドが綺麗に編み込まれてピンが留められていく。
鏡の前に立ってみれば、そこには別人がいた。
使用人として暮らし、質素な着物と生活しか送ってこなかった者とは到底思えない。それだけ鏡に映った今の自分はとても輝いて見えて戸惑いが隠せない。
「終わったか?」
「白夜様!」
支度が終わるのと同時に扉が開けば白夜が入ってくる。
お香がニヤニヤ笑いながら時雨を前へと突き出せば両者が向かい合う。
「ど、どうでしょう」
時雨の姿を食ういるように見つめる白夜。
一瞬目を見開けば何も言わなくなってしまった。
だがやがて普段通りの澄ました顔をすればスンと前を向く。
「…ま、悪くないんじゃね?」
そっぽを向いて答えた白夜は心なしか耳が赤い。
お香がニコニコと笑えば白夜は「なんだよ…」と怒っていた。
「行くぞ」
そのまま部屋を出て行ってしまう白夜をポカンと見つめる。
もしかして似合っていなかったかな?
時雨がしょんぼりしてれば横ではお香が笑っていた。
「ふふ、時雨様があまりにもお綺麗なので、若様は照れておいでなのですよ」
「綺麗?」
「はい」
それには首を傾げて白夜の出ていった部屋の方を見つめるが、急いで後を追うように自分も部屋を出た。
鳳魅の元へ向かえば、その日一日は気持ちが上の空だった。
そんあ時雨を不思議に思い、鳳魅に理由を聞かれればデートのことを相談してみる。すると向こうはニヤニヤと笑いながら「楽しんでおいで♡」と言うだけだった。
本当に白夜様は私とデートをしたいのかな?
そんな曖昧な思いで迎えた約束の日。
突如、部屋の扉が開けばお香を始めとした数人の使用人達が入室して来るので時雨はギョっとした。腕を掴まれればそのまま何も言わずに別室へ連れてかれる。中は和服から洋服、最新のメイク道具やエステまでなんでも揃っていた。
「さあ時雨様、覚悟は宜しいですか?」
気合いを入れたお香が腕捲りしながら尋ねてくる。
「いやもう…何が何だか。お香さん、これは一体、、、」
「今回はデートプランに合わせて色々な計画を練って参りました。まずはこちらのお召し物をご試着なさいませ」
使用人が持ってきた黒い生地をベースとした赤と白の大きな椿が咲き誇る美しい和柄の着物。
主役となる椿の花芯は金色。
背景にはほんのりと虹色に色づいた葉。
帯と帯飾りも可愛かった。
水色と白の縞模様柄に中央には赤い椿が描かれた帯。
金色の紐状の帯飾り。
全てが一級品で時雨も見惚れてしまう。
「凄い…こんな高価な着物。でも本当に私なんかが着ていいんですか?」
「勿論です!この着物は若様が見立てたものですよ」
「白夜様が⁈」
「先ほどこちらを時雨様にと。わざわざ訪ねて来られたのですよ。本当に時雨様は愛されていますね!」
白夜様が私に?
でもどうして、どうして私が椿を好きなのを分かったんだろう。
この花は亡き母が好きだった忘れ形見の花なのだ。
『お母さん!椿がお花を咲かせました』
『もうそんな季節なのね。今年は満開で綺麗だこと』
寒椿の咲き乱れた中庭。
はしゃぐ子供はまだ幼く、テラス席にはにこやかに腰かける母親。
白夜にこの話をした覚えはない。
それでもこうして用意された椿の着物は果たして偶然と言えようか。
もしや千里眼を???
時雨は彼の持つ千里眼の存在を思い出した。
白蛇の話でもそうだったが、言おうとしていた事を的確に指摘してくる彼の行動はもしや時雨の好きな花を読み解いたのではないか。
それなら幾分か納得はいく。
「良かったですね時雨様。さあ支度に取りかかりますよ!」
お香達はせっせと支度に取りかかれば、時雨はされるがままだった。
手始めにお風呂。
その後はエステと美容。
メイクに衣装合わせ。
長かった髪も洗う時間が勿体ないと久野家に来て短く切ってしまった。少し伸びてショートボブな髪には両サイドが綺麗に編み込まれてピンが留められていく。
鏡の前に立ってみれば、そこには別人がいた。
使用人として暮らし、質素な着物と生活しか送ってこなかった者とは到底思えない。それだけ鏡に映った今の自分はとても輝いて見えて戸惑いが隠せない。
「終わったか?」
「白夜様!」
支度が終わるのと同時に扉が開けば白夜が入ってくる。
お香がニヤニヤ笑いながら時雨を前へと突き出せば両者が向かい合う。
「ど、どうでしょう」
時雨の姿を食ういるように見つめる白夜。
一瞬目を見開けば何も言わなくなってしまった。
だがやがて普段通りの澄ました顔をすればスンと前を向く。
「…ま、悪くないんじゃね?」
そっぽを向いて答えた白夜は心なしか耳が赤い。
お香がニコニコと笑えば白夜は「なんだよ…」と怒っていた。
「行くぞ」
そのまま部屋を出て行ってしまう白夜をポカンと見つめる。
もしかして似合っていなかったかな?
時雨がしょんぼりしてれば横ではお香が笑っていた。
「ふふ、時雨様があまりにもお綺麗なので、若様は照れておいでなのですよ」
「綺麗?」
「はい」
それには首を傾げて白夜の出ていった部屋の方を見つめるが、急いで後を追うように自分も部屋を出た。



