「来んなつってんだろ!そんなに俺に殺されてぇのか!!」
「私、一目惚れしたんです!!」
「あ゛ぁ゛?」
女は上目越しの目で俺を見上げた。
「あの日、初めて貴方の姿をここで見かけて。それからは貴方のことが頭から離れなくて。だからここに来れば、また貴方に会えると思って。ずっとずっと探していたのですわ」
「どーでもいー」
正直俺を探していたとかクソほどどうでもいい。
しかも前に俺を見かけたということは、前回自分が現世に来たのが実に数週間も前のことだ。
だとするとコイツは。
そん時から今日、今の時間に至るまでの間をずっと探し続けていたということだ。
「(マジで勘弁してくれよ)」
好きでもない知らない奴に向けられる好意ほど気持ち悪いものはない。
だがコイツだけじゃない。
ぶっちゃけ、こういうストーカーまがいな真似されるケースは過去に何度かあった。
変に期待して。
どうにか関心を惹こうと必死になって。
己の体を差し出そうとしてまで必死にアピールして。
俺が好きになる保証などどこにもないというのに。
「私、貴方に夢中なんですの。こんなにも胸が痛く苦しくて張り裂けそうな程に一人の殿方を好きになったことはありませんわ。だからきっと。これは運命なのですわ♡」
「あ?何、言ってんだテメェ」
「私と貴方は運命の糸で繋がっているのですわ。絶対に離れることが許されない強い糸で離れていても最後には必ず会えるよう。そう私達は生まれた時から決められた運命なのです」
「(…何のポエムだよ)」
女は訳の分からないことをそう呟いて俺に触れようと手を伸ばす。
「チッ、だから触んな。…気持ち悪ぃよ、お前」
「!!」
女はその言葉に衝撃を受けたのか動かなくなった。
口をパクパクとさせて心底驚いている。
「お前の一目惚れとか運命とかなんざクソほどどうでもいい。俺には婚約者がいんだよ。邪魔だとっとと消えろ」
「ッ…嫌」
女は必死に手を動かせば俺に触れようとする。
俺はその手が俺に届くよりも先に女の横を通り過ぎれば見向きもせずに歩いて行く。
そんな俺の後ろ姿を熱意が込められた目で女が見つめていたとも知らずに。