白鬼の封印師

次の日の朝、時雨は緊張の趣で待機していれば白夜がやってくる。

「おはようございます」
「ん、おはよう」

白蛇の飼い方、白蛇の飼い方、白蛇の飼い方!!!
あれから予行練習までしてきたんだ。
後は言うだけなのに!!!
心では分かっていてもいざ目の前に座った白夜を見てしまえば、なかなか言い出すことができない。

「??何してんだオマエ」
「い、いえ!!なんでも!」
「??」

挙動不審なのがさっそくバレてしまい白夜は首を傾げていた。
なんとも情けない…時雨は心の中で半泣きだった。
すると何かを見かねた白夜とバッチリ目が合ってしまい逸らそうにも逸らせない。なんだこの気まずい状況は…時雨はどうこの変な空気を脱出しよか焦っていれば、白夜の瞳がスーッと細くなる。

「……そういや、白蛇はどうなった」
「え、あ…実はそのことで。白夜様にお願いがありまして。どうか私に白蛇の飼い方を詳しく教えていただきたいのです」

聞きたかった話の話題はすんなりと出てきてビックリ。
白夜は人の心が読めるのか?
不思議がる時雨とは対称に白夜はなんとも落ち着いた顔つきだった。

「世話の仕方ね~…鳳魅は何も言わなかったのか?」
「自分が教えるより白夜様に教わった方がいいと。その…白夜様さえ良ければ、、」

神獣を慣らすなど到底無理。
まだ幼く、神力にも乏しい。
神界の生き物ならいつ死んでもおかしくないのだから慎重に扱わなければならないと言われてしまった以上、それには神獣の知識と妖力に長けた者に教わるのが一番いい。
だが頼りの鳳魅は白夜を推薦した。
こうなっては時雨も白夜に教わる他なかった。

「でもでも!当主様も候補に考えてみました。ですがお忙しい方ですから。偶にお話はしますがなかなか聞きづらくて」
「大前提当主に相談しようとする度胸は認めるわ。オマエやばいな」
「え、何がですか?」
「そういうとこだよ。あんなおっかない人にのこのこ話しかけるとか…」
「怖いですか?私には優しい方のようにしか見えませんけど」
「け、猫被りが。ま、いいや。白蛇の件は構わなぇけど一つ交換条件な~」
「交換条件??」

すると白夜は「お~」とニヤリと笑った。
ん?
な、なんだ??
なんかやけに白夜様が楽しんでるような、、。
時雨は少し身構えてしまう。

「明日の夜、空いてる?」
「明日ですか?空いてますけど…」
「なら出かけるぞ」
「出かける?何処に?」
「妖都」

妖都?
それって妖王が住んでいるっていう隠世の都市だったっけ?
他にも上位貴族達である大妖怪が沢山住んでるって聞いたことある。

「夕方に部屋行くから。予定入れんなよ」

それだけ言えばこの話はそれで終わってしまった。
側では聞き耳を立てていたお香が「まあ!」と顔を輝かせているのでもう訳が分からなかったが、白夜は何も言わないし、時雨一人だけが取り残された感を味わう結果となったのだ。
朝食終了後、白夜はさっさと部屋を出てしまうので、時雨はその様子をボケ~っと見ていれば、隣では興奮したお香が駆け寄ってくる。

「時雨様!!さっきの聞きましたか⁈あの若様がデートに誘われましたよ!!」
「デートですか?誰がです??」
「も~そんなの時雨様以外に誰がいるんですか!今まで誰一人、デートなど誘うこともなかった冷酷非情なあの若様が。はぁ♡ようやく若様にも春が来たのですね~」

デート…時雨はそれを聞けば顔を真っ赤にさせる。
白夜様が自分とデートをしたいですって??
まさかそんな訳、だって今までそんな素振りなんて一度も。

「いやいや!まさかそんなデートだなんて。ただ妖都に行くってだけで」
「それがデートなんです!!若様が過去妖都に女性を連れて行くことはありませんでした。あそこは隠世でも屈指のデートスポットとして有名な場所も多く色んなお店もございます。若様は時雨様とお出かけがしたいのですよ」
「え…そんなまさか」
「明日はこのお香にお任せ下さい!!そうと決まればさっそく準備に取り掛からねば!」
「え、もうですか⁈」

一人ウキウキなお香はテンション高く部屋を出ていった。
おしゃべりなお香のせいで噂は瞬く間に屋敷中に広がり、その日一日は白夜と時雨のデートの話題で持ち切りとなる始末。

「デートだなんて…」

時雨は白夜の顔を思い出せば照れてしまった。
意識してしまえばハッキリと伝わる鼓動の速さ。
最近はどうも調子が悪い。
白夜のことを考えるだけで胸がジンジンと熱く痛むのだ。
あの美しい顔で話をされるたび平常を装うのが精一杯だった。
一緒に出掛けるともなれば一緒にいる時間がもっと増えるのだから、時雨は緊張で頭がどうにかなってしまいそうだった。