白鬼の封印師

「みつけた」
「あ?」

突如、後ろからは声が聞こえてきた。
白夜が振り返れば、そこにいたのは知らない女。
またかよ!!
白夜は内心イライラが募るのをこらえていた。
今日は本当についてない。
普段に比べて声をかけてくる者も多く、計画をことごとく潰されてるとこきてアクシデント続きに何一ついい事がない。
別の女の登場に溜息をつけば、見て見ぬふりを決め込み歩き出す。

「あ、待って!!」

女は白夜の前に走る込むと行く手を阻む。

「どけよ。誰だよ、オマエ」
「あぁ…やっと////やっと貴方にお会いすることができましたわ」
「はあ??」

誰だコイツ…俺は知らない。
だが向こうはウットリと白夜を見つめれば手を握ってくる。
反射的に振り払えばしょんぼりした顔をされるも直ぐに元の顔に戻った。一歩距離を詰めてくるので白夜も一歩下がる。

「ずっとずっと貴方を探していたんです!会えて良かった////」
「よくねぇよ。つーか誰だよオマエは!」
「好きです。私と付き合って下さい!!」
「なんでそうなるんだよ!!」

話がまともに通じない。
さっきから顔を赤らめ好き好き連呼をする女に引いてしまう。
まこと人間の女とは恐ろしい生き物だ。
少し気を許せば直ぐ調子にのる。
誰もが白夜の彼女だと威張り、得意げにしていた。
その点、妖の女は立場をわきまえた者も多い。
完全階級主義な隠世では御三家に逆らうことはできないと一線を越えようとはしてこない。だが人間とくれば話は別だ。欲が強すぎる。正直白夜ですら手に負えず、苦労した経験も多いせいか相手をみる目は益々厳しくなった。

「貴方に一目惚れしたんです。だから付き合って下さい♡」
「チッ、触んな」

直ぐ顔を触ろうとしてくる。
それを白夜は手で振いのければ、女は名残惜しそうな顔でそれならばと距離を詰めてきた。俊敏に詰められればそこに無駄な動きがない。白夜は一瞬目を疑った。

「来るなよ。去れ」
「付き合って下さい」
「何度言えば分かるんだよ!嫌だって言ってんだろ!!」

流石の諦めの無さには白夜もキレてしまった。
一体なんなんだ…さっきからニコニコと見つめる姿が不気味でしょうがなかった。
だがふと、白夜は女のどことなく纏う雰囲気に違和感を覚えた。
人間にしては容姿もそこそこ良い。
ハニーブロンドの髪にメイクの行き届いた顔。
感覚に優れるこの瞳が自分に告げたのは警告だ。

「オマエ…ほんとにただの一般人か?」
「!!え、、、」
「……いや、なんでもない。さっさと消えろ」

気味が悪い。
だがそれ以上に相手にするのが面倒くさかったので、白夜は早々に立ち去ろうと足を動かした。だがまたもや目の前には女が躍り出てくるので進もうにも進めない。

「どけって言ってるだろ!何回言えば分かるんだ!!」
「私、久野一華と申しますの」
「あ゛?」
「貴方の名前を教えて頂けませんこと?貴方が本気で好き。だから貴方を知りたいんです」
「知らねーよ。誰が見ず知らずの他人に名前なんか教えてや…」

あ?
待て…久野だと?
コイツ…今、久野と言ったか?
それともただの聞き間違いか。
白夜は再確認のため女を見つめる。

「おい、オマエの名前。今なんつった?」
「久野一華です!」

やっぱ聞き間違えなんかじゃない。
アイツと同じ苗字だ。
偶然にしてはよくできている。
そう簡単にアイツと同じ苗字の奴が現れるか?
しかも一般の人間が、だ。
いや有り得ない。
本来、久野を並びに他御三家が持つ苗字はいずれも一般家庭には存在しない。
現世で唯一、異能の有無を隔てる証明にもなりうるため、国が特別枠に定めているから。多くの邪気を異能で浄化する術師の存在は公の場に正体が知られてはいけない。
国の法律で義務付けられているのだ。
つまりこの女は…久野家の人間で間違いないということ。

「久野家の術師が俺に何の用だ」
「まあ!私のことを知って下さってたの?嬉しい////!!」

何を勘違いしたのか、女はとても喜んでいた。