「ははは、それはすまなかったね」
次の日、私は昨日あった出来事を鳳魅さんに話して聞かせた。何を思ったのか白夜様は、今日の朝にはきちんと食卓までやって来ると一緒に食事を始めたのだ。
会話も少しではあるが返してくれる。
これには私もビックリだ。昨日の帰り際に言っていたことは冗談抜きで本当のことだったのだ。
「昨日は私も強気に交渉に応じちゃったところがあるけど。でも改めて考えると白夜様相手は正直怖いな」
「でも良かったじゃないか。これで君は若と晴れてお友達になれたんだから。夫婦までの道のりに一歩前進だよ♡」
「友達っていえるのかな…これ」
何せ昨日の今日だ。
この二日間でたくさんのことが起こった気がする。
ん?いわれてみれば私。
ここに来てからまだ一週間も経ってない?
「ま、君なら大丈夫さ。なんせ特別だからね~」
「それお香さんも言ってたけどどういう意味?」
私が特別って。何を指してそう言っているのかは全くもって理解できない。
異能をもたないこと?
それとも白蛇に嚙まれたこと?
「あ、そういえばこの蛇のことなんだけど。神獣って何?この蛇は実際のところ何が凄いの?」
白蛇さんは昨日から私の腕に巻き付いたまま離れようとしない。お香さんはこの子が私の腕に巻き付いているのを知るやビックリして腰を抜かしかけてたけど。
流石に寝る時だけは腕から離れると枕元へと移動し、とぐろを巻いて一緒に寝ている。
後、お風呂は苦手らしい。
「そのことについてはあまり詳しく話せてなかったね。じゃあこの薬を煮込むまでの間、僕が教えてあげるよ」
煮立たせている薬は浄化薬とはまた違う。
彼曰く、ここでは普通の薬剤も多く作っているらしい。
都にも売りに出しては実際に販売されている薬もあるのだとか。シーシャをくわえてソファーに座る鳳魅さんを横目に私はお茶の準備に取り掛かった。私も今ではすっかりあの蓮のお茶を愛用するまでになった。
「まず神獣というのは神に仕える眷属のようなもので神使とも呼ばれるんだ。神意を代行して現世と接触する者ともいえる彼らの存在は、人間や妖の力を遥かに超える強力な力を宿した存在だ」
「とても強いってこと?じゃあこの子も?」
「勿論凄いよ。ただ見たところ、生まれたばかりのせいか備わっている霊力が充分じゃない。今は時雨ちゃんを強い邪気から守る為の加護を与えるのに精一杯ってとこかな」
あ、そう言えば。
なんとなくだけど、この子が私のものになってからは少し体調が優れたように感じる。
この子が私の身体を神力で安定させてくれたというのなら。噛まれた時点で私への加護は始まっていたのか。
「因みに日本で神獣の例を挙げるなら、十二支が一番分かりやすい例えになるかな」
「ああ!確かにそう言われてみれば蛇は干支の中にも含まれてるね」
「もともと干支は中国から日本に伝わったものなんだ。十二で構成された動物が干支と思う者も多いけどこれは間違い。干支は十二支に十支を合わせたもので『干』は十支、『支』は十二支を表しているんだ。もっと詳しくいえば十二支は年、十支は日付を表す」
十二支は子から亥までの十二種類の動物が存在しており子から始まると十二年で一周する。
これに対し、十支は甲から癸までの十種類の日付を表しているから十日で一周する。
つまり干支は十二年で一回りするのに十支を組み合わせた時、六十年で一周することが分かる。
「六十歳を迎えた人を還暦と呼ぶだろう。これは正にここからきている言葉なんだ。干支と十支が一回りして暦が戻ったという意味さ」
「なるほど」
「昔は時刻を知らせるものがなかった。人々は日の出から日の入りまでを『昼』、日の入りから日の出までを『夜』と定めた不定時法を使った。ここから昼と夜を各六等分することで一日を十二時間に分けた訳さ」
季節によって時間の長さは一定にさせることが出来ない。現に夏と冬では日が差す時間の間隔に違いが生じてしまうから。十二支はこういった時、一日を十二時間と定めた時間区域にあてはめられていたというわけだ。
「じゃあ現在は二十四時間だから各区間を十二等分。更に十二支をあてはめた時、子を例にするなら示す時刻は二十三時から一時までということ?」
「对!加えて方位が絡めば子を北に時計回りに十二等分していく。でもこれだと細かい方位までは決めることが出来ない。だから北東なら丑と寅との間に位置するから丑寅。南西なら未と申との間だから未申と呼ぶんだ」
東西南北。
北は子、東は卯、南は午、西は酉。
「北東って確か鬼門って言われてるよね?じゃあ、ここ鬼頭家って」
「まあ鬼頭家というより、隠世全体が北東に位置すると考えていいね」
「あ、丑三つ時は不吉な時間ってよく聞くんだけど。あれって各干支の占める時刻の割合を更に分割しているってことでいいの?」
「そうそ。それぞれの刻を更に四等分していく。丑三つ時はこう考えると丑みっつ。数えれば午前二時から二時半までの時間を指していることになるね」
次の日、私は昨日あった出来事を鳳魅さんに話して聞かせた。何を思ったのか白夜様は、今日の朝にはきちんと食卓までやって来ると一緒に食事を始めたのだ。
会話も少しではあるが返してくれる。
これには私もビックリだ。昨日の帰り際に言っていたことは冗談抜きで本当のことだったのだ。
「昨日は私も強気に交渉に応じちゃったところがあるけど。でも改めて考えると白夜様相手は正直怖いな」
「でも良かったじゃないか。これで君は若と晴れてお友達になれたんだから。夫婦までの道のりに一歩前進だよ♡」
「友達っていえるのかな…これ」
何せ昨日の今日だ。
この二日間でたくさんのことが起こった気がする。
ん?いわれてみれば私。
ここに来てからまだ一週間も経ってない?
「ま、君なら大丈夫さ。なんせ特別だからね~」
「それお香さんも言ってたけどどういう意味?」
私が特別って。何を指してそう言っているのかは全くもって理解できない。
異能をもたないこと?
それとも白蛇に嚙まれたこと?
「あ、そういえばこの蛇のことなんだけど。神獣って何?この蛇は実際のところ何が凄いの?」
白蛇さんは昨日から私の腕に巻き付いたまま離れようとしない。お香さんはこの子が私の腕に巻き付いているのを知るやビックリして腰を抜かしかけてたけど。
流石に寝る時だけは腕から離れると枕元へと移動し、とぐろを巻いて一緒に寝ている。
後、お風呂は苦手らしい。
「そのことについてはあまり詳しく話せてなかったね。じゃあこの薬を煮込むまでの間、僕が教えてあげるよ」
煮立たせている薬は浄化薬とはまた違う。
彼曰く、ここでは普通の薬剤も多く作っているらしい。
都にも売りに出しては実際に販売されている薬もあるのだとか。シーシャをくわえてソファーに座る鳳魅さんを横目に私はお茶の準備に取り掛かった。私も今ではすっかりあの蓮のお茶を愛用するまでになった。
「まず神獣というのは神に仕える眷属のようなもので神使とも呼ばれるんだ。神意を代行して現世と接触する者ともいえる彼らの存在は、人間や妖の力を遥かに超える強力な力を宿した存在だ」
「とても強いってこと?じゃあこの子も?」
「勿論凄いよ。ただ見たところ、生まれたばかりのせいか備わっている霊力が充分じゃない。今は時雨ちゃんを強い邪気から守る為の加護を与えるのに精一杯ってとこかな」
あ、そう言えば。
なんとなくだけど、この子が私のものになってからは少し体調が優れたように感じる。
この子が私の身体を神力で安定させてくれたというのなら。噛まれた時点で私への加護は始まっていたのか。
「因みに日本で神獣の例を挙げるなら、十二支が一番分かりやすい例えになるかな」
「ああ!確かにそう言われてみれば蛇は干支の中にも含まれてるね」
「もともと干支は中国から日本に伝わったものなんだ。十二で構成された動物が干支と思う者も多いけどこれは間違い。干支は十二支に十支を合わせたもので『干』は十支、『支』は十二支を表しているんだ。もっと詳しくいえば十二支は年、十支は日付を表す」
十二支は子から亥までの十二種類の動物が存在しており子から始まると十二年で一周する。
これに対し、十支は甲から癸までの十種類の日付を表しているから十日で一周する。
つまり干支は十二年で一回りするのに十支を組み合わせた時、六十年で一周することが分かる。
「六十歳を迎えた人を還暦と呼ぶだろう。これは正にここからきている言葉なんだ。干支と十支が一回りして暦が戻ったという意味さ」
「なるほど」
「昔は時刻を知らせるものがなかった。人々は日の出から日の入りまでを『昼』、日の入りから日の出までを『夜』と定めた不定時法を使った。ここから昼と夜を各六等分することで一日を十二時間に分けた訳さ」
季節によって時間の長さは一定にさせることが出来ない。現に夏と冬では日が差す時間の間隔に違いが生じてしまうから。十二支はこういった時、一日を十二時間と定めた時間区域にあてはめられていたというわけだ。
「じゃあ現在は二十四時間だから各区間を十二等分。更に十二支をあてはめた時、子を例にするなら示す時刻は二十三時から一時までということ?」
「对!加えて方位が絡めば子を北に時計回りに十二等分していく。でもこれだと細かい方位までは決めることが出来ない。だから北東なら丑と寅との間に位置するから丑寅。南西なら未と申との間だから未申と呼ぶんだ」
東西南北。
北は子、東は卯、南は午、西は酉。
「北東って確か鬼門って言われてるよね?じゃあ、ここ鬼頭家って」
「まあ鬼頭家というより、隠世全体が北東に位置すると考えていいね」
「あ、丑三つ時は不吉な時間ってよく聞くんだけど。あれって各干支の占める時刻の割合を更に分割しているってことでいいの?」
「そうそ。それぞれの刻を更に四等分していく。丑三つ時はこう考えると丑みっつ。数えれば午前二時から二時半までの時間を指していることになるね」