嵐が過ぎ去ったかのような出来事に私は動けないでいると、当主様は「はぁ」っと溜息をこぼした。
「うちの息子がすまなかった。もう分かっているとは思うがアレが息子の白夜だ。本来なら息子自らが鬼門の地へと出向き、そなたを迎い入れる筈であったのだが。見ての通り息子はあんな感じでな」
「…かなり苦労されているのですね」
「ああ。全くもってあいつにはほとほと家のもんも手を焼いていてな。自分勝手な性格のせいか、こちらの要求にもまともに応じずいつだって好き放題する始末。それでも現隠世界で王に継ぎ強い妖力を持つ手前、周りも邪険に扱うことが出来ない。そなたには何かと迷惑をかけるが仲良くしてやってはくれぬか」
美しいだけではおさまらない白夜様の存在。
ご当主様の話から察すれば、何もあの性格は私一人にだけ向けられていた訳ではないと分かりホッとする。
「わ、私なんかで務まるのでしたら精進して参ります」
「はは、そなたは優しいな。今まで来た娘達とは大違いだ」
「…今までとは過去にもここに久野家の方がいらっしゃったのですか?」
「ああ、私の代に何度か鬼頭家の分家にあたる方へ向かい入れたことがある。その頃は白夜も生まれてなかったからな。あの子の母親は生まれて直ぐに病いで亡くなっている」
「…そうでしたか」
なんだか申し訳ない事を聞いてしまったような気がする。
「あの子には母親の愛情がないまま厳しく育ててしまったところもある。いずれは鬼頭家の上に立つべき存在。今ぐらいは自由にさせてあげようと見守ってはいるのだが。最近は親切心に欠けた部分が多くて手に負えん」
「お呼びでございますか当主様」
外からかけられた声にそちらを振り向くとお香さんの姿が確認できた。
「来たか。時雨さんを部屋へお連れしろ。疲れただろうから今日はゆっくり休むがよい」
ご当主様は私にそう仰ると立ち上がり部屋を退出された。私は慌ててお辞儀をするとその様子を見守った。
「ささ、時雨様!お部屋にご案内致します」
どこか嬉しそうなお香さん。
私は手を引かれるまま大広間の間を後にした。
「うちの息子がすまなかった。もう分かっているとは思うがアレが息子の白夜だ。本来なら息子自らが鬼門の地へと出向き、そなたを迎い入れる筈であったのだが。見ての通り息子はあんな感じでな」
「…かなり苦労されているのですね」
「ああ。全くもってあいつにはほとほと家のもんも手を焼いていてな。自分勝手な性格のせいか、こちらの要求にもまともに応じずいつだって好き放題する始末。それでも現隠世界で王に継ぎ強い妖力を持つ手前、周りも邪険に扱うことが出来ない。そなたには何かと迷惑をかけるが仲良くしてやってはくれぬか」
美しいだけではおさまらない白夜様の存在。
ご当主様の話から察すれば、何もあの性格は私一人にだけ向けられていた訳ではないと分かりホッとする。
「わ、私なんかで務まるのでしたら精進して参ります」
「はは、そなたは優しいな。今まで来た娘達とは大違いだ」
「…今までとは過去にもここに久野家の方がいらっしゃったのですか?」
「ああ、私の代に何度か鬼頭家の分家にあたる方へ向かい入れたことがある。その頃は白夜も生まれてなかったからな。あの子の母親は生まれて直ぐに病いで亡くなっている」
「…そうでしたか」
なんだか申し訳ない事を聞いてしまったような気がする。
「あの子には母親の愛情がないまま厳しく育ててしまったところもある。いずれは鬼頭家の上に立つべき存在。今ぐらいは自由にさせてあげようと見守ってはいるのだが。最近は親切心に欠けた部分が多くて手に負えん」
「お呼びでございますか当主様」
外からかけられた声にそちらを振り向くとお香さんの姿が確認できた。
「来たか。時雨さんを部屋へお連れしろ。疲れただろうから今日はゆっくり休むがよい」
ご当主様は私にそう仰ると立ち上がり部屋を退出された。私は慌ててお辞儀をするとその様子を見守った。
「ささ、時雨様!お部屋にご案内致します」
どこか嬉しそうなお香さん。
私は手を引かれるまま大広間の間を後にした。