『ルジェミア、あなた悪女になりなさい』


私はお姉様と仲良くしたかった。


だから……


『分かりました』


お姉様の要望にはどんなことでも応えようと、そう思った。


「ルジェミア様だわ」


「ほんとだわ。早くここから去った方がよさそうね」


ただ歩いているだけて感じる視線。


そのどれもが冷たいものだった。


そんな視線と言葉が向けられるのは当たり前。


だって、私は“悪女”だから。


「きゃっ」


気にしないふりをしながら歩いていると、誰かとぶつかった。


普通なら、謝らないといけない。


でも、ここでも悪女でいないといけないから。


「ちょっと、前見て歩きなさいよ」


ごめんなさい……


言えない代わりに、心の中で謝った。


伝わるわけがないけど、せめてもの自己満足だった。


「す、すみません」


「気をつけなさい」


元々気弱な性格だから、正直言って傲慢な言い方には慣れていない。