(うぅ……、頭、痛い……)
ズキズキとした全身の痛みに、私の意識は呼び戻された。
(なんだ、これ……。体も、痛くて……。腕、動かしにくい……)
「う……」
思わず呻き声が漏れる。すぐ近くで誰かが身じろぎする衣擦れの音が聞こえた。
(あ、そっか。私、階段から落ちて……)
記憶がよみがえるに合わせ、ゆっくりと目を開く。
(……は?)
やたらとまばゆい。朱と金で彩られた光景が目に飛び込んできた。
自分の部屋でも、病室でもない。
(え? 中華のお店? なんで?)
反射的に身を起こす。その瞬間、激痛が全身を貫いた。
「ぐぅっ!」
「翠蘭様!」
年を重ねた女性の声と共に、体は支えられる。
「皆! 皇后陛下がお目覚めになられた!」
落ち着きのあるよく通る声。それに呼び寄せられるように、パタパタといくつもの足音が近づいてくる。
「翠蘭様が、お目覚めに!?」
「ああ、よかった! 翠蘭様!」
(すいらん?)
集まってきた少女たちはそれぞれ涙を流し「良かった良かった」を繰り返している。彼女らの服装や髪型は、中国の歴史ドラマで見たようなものだった。
ずきずきと痛む頭で、私は考える。
(さっきなんて言われた? 皇后?)
「あの、鏡を……」
「えぇ、翠蘭様。誰か、鏡をお持ちして!」
「はい! こちらをどうぞ」
博物館で見たような仰々しい装飾の手鏡を渡される。中をのぞき込み、私は息を飲んだ
(これは……!)
そこに映っていたのは、オタクでアラフォーの高田朱音ではなかった。
天女のように美しい、なよやかな若い女。
あちこちに包帯を巻かれ、痛々しい姿ではあるけれど。
そしてその服装はやはり、周りの少女たちと同じ古めかしい中華風のものであった。
「ささ、皇后様。まだ無理をしてはなりません」
年かさの女性に促され、私はゆっくりと横たわる。
(皇后、だよね? 間違いなく、皇后って呼ばれてるよね、私。なにこれ? どういう状況? あちこち包帯ぐるぐるだし。いったい何があったの!?)
そうこうしている間にも、湯が運ばれ、香が焚かれ、医師らしき人が呼ばれる。
「奇跡でございますな」
私の脈を取り、老人がにこにこと笑う。
「一時は息が止まっておられましたのに」
(は?)
……今、なんて?
息、止まってた?
ズキズキとした全身の痛みに、私の意識は呼び戻された。
(なんだ、これ……。体も、痛くて……。腕、動かしにくい……)
「う……」
思わず呻き声が漏れる。すぐ近くで誰かが身じろぎする衣擦れの音が聞こえた。
(あ、そっか。私、階段から落ちて……)
記憶がよみがえるに合わせ、ゆっくりと目を開く。
(……は?)
やたらとまばゆい。朱と金で彩られた光景が目に飛び込んできた。
自分の部屋でも、病室でもない。
(え? 中華のお店? なんで?)
反射的に身を起こす。その瞬間、激痛が全身を貫いた。
「ぐぅっ!」
「翠蘭様!」
年を重ねた女性の声と共に、体は支えられる。
「皆! 皇后陛下がお目覚めになられた!」
落ち着きのあるよく通る声。それに呼び寄せられるように、パタパタといくつもの足音が近づいてくる。
「翠蘭様が、お目覚めに!?」
「ああ、よかった! 翠蘭様!」
(すいらん?)
集まってきた少女たちはそれぞれ涙を流し「良かった良かった」を繰り返している。彼女らの服装や髪型は、中国の歴史ドラマで見たようなものだった。
ずきずきと痛む頭で、私は考える。
(さっきなんて言われた? 皇后?)
「あの、鏡を……」
「えぇ、翠蘭様。誰か、鏡をお持ちして!」
「はい! こちらをどうぞ」
博物館で見たような仰々しい装飾の手鏡を渡される。中をのぞき込み、私は息を飲んだ
(これは……!)
そこに映っていたのは、オタクでアラフォーの高田朱音ではなかった。
天女のように美しい、なよやかな若い女。
あちこちに包帯を巻かれ、痛々しい姿ではあるけれど。
そしてその服装はやはり、周りの少女たちと同じ古めかしい中華風のものであった。
「ささ、皇后様。まだ無理をしてはなりません」
年かさの女性に促され、私はゆっくりと横たわる。
(皇后、だよね? 間違いなく、皇后って呼ばれてるよね、私。なにこれ? どういう状況? あちこち包帯ぐるぐるだし。いったい何があったの!?)
そうこうしている間にも、湯が運ばれ、香が焚かれ、医師らしき人が呼ばれる。
「奇跡でございますな」
私の脈を取り、老人がにこにこと笑う。
「一時は息が止まっておられましたのに」
(は?)
……今、なんて?
息、止まってた?