「あとは、ここの送信を押せば応募は完了……」

「迷っていて!」


 絞り込んだ言葉は。

 振り絞った気持ちは。

 迷い。

 だった。


「七瀬ちゃんは先輩でもあって……幼なじみでもあって……どういう風にお話ししたらいいのか分からなくて……」


 自分が抱えている恥ずかしさを、七瀬ちゃんに聞いてもらって何になる。

 こんな話題を振られたところで、どんなに空気を読むことができる七瀬ちゃんだって困惑してしまうに決まっている。


「楽しくお話……したいのに……」

 
 七瀬ちゃんはパソコンの画面から、私に目線を向けてくれた。


「近くすぎても、遠すぎても怖いよね」


 言葉に込められた強さが消えて、あ、これが素の七瀬ちゃんだって気づいた。気づくことができた。

 私たち、普通に……自然に言葉を交わし合うことができているって気づいたときに、自分の中に安堵感のようなものが生まれきているって……分かった。

 なんか、心があったかいような気がする。


「真白ちゃんの気持ち、預けてくれると嬉しいな」


 あ、私が、距離を開かなければ良かった。

 私が距離を遠ざけることなく、七瀬ちゃんと積極的に言葉を交わしていたら……。


「久しぶりって、難しいね」


 こんなにも、素敵な表情をした七瀬ちゃんにもっと早く会うことができたのに。


「七瀬ちゃん……」

「うん」

「……これからも、いっぱい言葉を間違っちゃうかもしれないけど……」


 過去に、戻ることはできない。

 ほんの数十分前にすら戻ることができないっていうのが、現実。

 過去に戻るっていう不思議な力は、物語の中でしか手に入らない。けれど、求める力は現実の世界で展開させていくことが可能だって私は気づいた。


「七瀬ちゃんの隣にいきたい」


 幼少期の私に、夢は本当に叶うんだってメッセージを飛ばすために。
 
 そして、大好きな七瀬ちゃんと一緒にいられるように。


「おいで、真白ちゃん」


 そう、決めた。

 だから、私は、今日から始めてみせる。

 七瀬ちゃんを幸せにする計画を、先へと進めてみたいと思う。