道ゆく人の視線が気になっていた。多分誰も自分たちのことなんて気にしていないはずなのに、午前中から浴衣姿で街を歩いている高校生二人を客観的に見れば変人だと思う。璃仁なんて靴を履いていない。幸い夏休みなので家出高校生だと思われなくて済むが、早く私服に着替えた方がいいという紫陽花の提案は間違っていなかった。

 璃仁たちは俯いて身を縮こませながら歩き、ようやく洋服が買えそうなショッピングモールにたどり着いた。

「まずは靴を買いましょう」

「はい」

 紫陽花に連れられて靴屋さんに入る。正直こういう商業施設に慣れていない璃仁はどこに何の店があるのか全然知らなかった。対する紫陽花はよく来るのか、あまり迷うこともなくお店を探し当てた。
 適当なスニーカーを手に取り履いてみるとぴったりだ。

「これいいんじゃない? 似合ってるし」

「そうですか? でも確かに履き心地いいし、これにしようかな」

「うん、そうしよう!」

 紫陽花に乗せられてあっさりと靴が決まり、璃仁は財布から一万円札を取り出した。これまで貯めてきたお小遣いがここで役に立つとは。

「いいねいいね。新品の靴って気分上がるね」

「はい。でも浴衣にスニーカーって激ダサです」

「ははっ。今から服買うから大丈夫だって」

 言いながら笑いが止まらない様子で紫陽花がお腹を抱えていた。通り過ぎる人たちが璃仁たちを一瞥する。そりゃそうだ。浴衣姿でショッピングモールを歩き、そのうちの一人はスニーカーを履いているのだから。

 璃仁は急いでメンズ服コーナーへ行き、Tシャツと短パンを購入した。お洒落のことは全然分からないので適当に選ぼうと思ったのだが、紫陽花が「ああでもない、こうでもない」と悩みながら璃仁の服を選んでくれた。その真剣なまなざしに璃仁はこみ上げてくるものがあり、紫陽花に言われるがまま服を買ったのだ。
その後はレディース服コーナーへと赴き、紫陽花の服を選んだ。紫陽花は目を輝かせてブラウスやらワンピースやらを鏡の前で当て、逐一璃仁に意見を求めてきた。

「白、似合ってますね」

「そうかな? あーでもこっちのワンピースも捨てがたいのよねえ」

「それなら両方買えばいいじゃないですか」

「そっか! そうしよう!」