それ以来、璃仁は「SHIO」のファンとなり、こっそりと彼女のアカウントをチェックしている。恥ずかしいのでフォローなんておこがましいことはできないが、彼女のアカウントは鍵付きアカウントではないのでいつでも覗きにいくことができた。

 ネットストーキング、という言葉が頭をよぎることもあった。だが、自ら全世界に自分の写真を発信している彼女だから、誰に見られても構わないと思っているのだろう。そう自分に言い聞かせることで、自分の行為を正当化していた。

 璃仁が乗る電車が学校の最寄駅である「東雲(しののめ)駅」へと到着する。スマホをポケットにしまい、いつもの通学路を歩き出す。きっと今日も、変わらない一日が始まるのだ。一時間目から六時間目まで、退屈な授業をどう耐えぬこうか、日々そんなくだらないことを考えて、人生のかけがえのない時間を無駄にしていた。璃仁には煌めくような青春の日々はやってこない。というか、充実した青春時代を送ることを、諦めていた。

 今日、彼女に出会うまでは。