でも、あの会話をしてから撮ったのかもしれないと思うと、嬉しいような、おかしいような、愛しいような。

 言葉に言い表しにくい感情を抱いた。



 あれから私は『U』のアカウントを見る時間が増えた。

 友達数は1で、投稿はぼやけた月の写真だけ。
 つまり何も動いていない。

 それなのに、私は飽きもせずに画面を眺めていた。

「ゆっこがスマホ見てるなんて、珍しいね」

 るんちゃんは背後から現れた。

 声をかけられて慌てて画面を隠したけど、多分見られた。

「るんちゃん、おはよう」
「おはよう。ねえ、もしかして気になっちゃった?」

 るんちゃんは楽しそうに前の席に座る。

 “うきうき”という効果音はきっと、今のるんちゃんに使われるのだろう。

 そんな現実逃避をしたくなるような話題だった。

 しかしその話題を続けるのは危険だと、周りの女子の視線が教えてくれる。

 彼女たちが気にしているハルキのことではないのに、どうしてこんなに睨まれなければならないのか。

 ため息をつかずにはいられない。

 そのとき、スマホにメッセージが届いた。
 るんちゃんからだ。

『悠斗くんにメッセージ送ってみたら?』

 どうしてもその話題を展開したいらしい。

『送れるわけないでしょ』

 不満であることは、顔が語っている。

『友達登録しないとメッセージのやり取りはできない。ほとんどの女子に見張られている今、ハルキに近い人と仲良くなんてできない』

 まだ頬が膨れている。

 と思ったら、るんちゃんはなにか閃いたらしい。

『私のアカウントでやり取りするのは?』
『却下』

 迷わず送った。

「なんで?」

 なんのために、この至近距離にいながらメッセージを送りあっているのやら。

「面倒」

 るんちゃんはメッセージを打ち、視線で訴えてくる。

『仲良くなりたくないの?』

 それにはすぐに返事ができなかった。

 面倒ごとを避けたいのも、水野君のことが知りたいのも本心で。

 でも、やっぱり面倒ごとが起きるのが嫌だと思う気持ちのほうが少しだけ大きくて。

『心が決まったら教えてね。私はいつでもゆっこの味方だから!』

 野次馬根性のるんちゃんはどこに行ったのか、本当に心強い笑顔を浮かべている。

 ここまで言ってくれるなら、大舟に乗ったつもりで任せてみよう。

『メッセージ、なんて送ったらいいと思う?』

 私が送ると、一瞬で野次馬が戻ってきた。

 目の輝きで、そんなことを思った。

『昼休み、隣の空き教室集合!』

 どうやらこれ以上メッセージでやり取りをするのは限界らしい。

 喋りたくて仕方ないというのもあるのかもしれないけど。

『了解』

 そしてるんちゃんは自分の席に向かった。