実際に水野君と話してみて、嫌な感じはしないから、本当に迷惑ではないのだと思う。

 ただ、実際に会ったからといって、友達登録をするかは別の話だ。

 今の私のアカウントは、最低一年の女子全員には見張られている。

 そんな中で水野君と友達登録をしてしまうと、どうなるのかなんて容易に想像できる。

「迷惑じゃないならよかったです」

 メガネの奥の瞳が、優しく見える。

 他人の視線でそう感じたのが久しぶりな感じがして、私は泣きそうになってしまう。

 水野君と視線を合わせているのは危険だと思い、視線を動かしていく。

 そのとき、夜空に一番星以外の星が輝き始めているのに気付いた。

 もう、完全に日が暮れてしまっていたらしい。

「星、綺麗ですよね」

 私の視線の動きを見て、水野君も夜空を眺めてこぼした。

「一番星を……写真に残したかったんです」

 気が、緩んだのだと思う。

 自分でも、こんな会話を始めるとは思っていなかった。

「星を写真に残すのは、難しくないですか」
「……ええ」

 私が今回写真を撮らなかったのはそれだけが理由ではないけれど、今それを口にしてしまうと、また関係のない水野君を責めてしまうような気がして、言えなかった。

「夜道は危ないですし、送りますよ」
「いえ、これ以上騒ぎを大きくしたくはないので、遠慮しておきます」

 そして水野君と別れ、一人で家に帰る。

 その途中、スマホを取り出して鈴梨アプリを開く。

 大量の友達申請が来ているのは、私に直接文句を言いたい女子たちの仕業だろう。

 友達登録をしないかぎり、個人でのメッセージのやり取りができないから。

 よく飽きないな。

 水野君と話してすっきりしたのか、私はその通知に対して、その程度のことしか思わなかった。

 そして、目的のアカウントを探す。

『U』

 一番最初に私に友達申請をしてきた人。

 これが水野君のものか確定はしていないけれど、私は水野君のものだと思いたかった。

 相変わらずなにも投稿されていないし、友達数も変わっていない。

 なにか投稿してくれたら、水野君のことを知れるかもしれないのに。

 そんなことを思ったとき、一件の投稿がされた。

『夜空』

 その一言とともに、暗闇の中で輝く月の写真が投稿された。

 お世辞にも上手な写真とは言えない。

 月はぼやけているし、周りに存在しているはずの星は見えない。