怒らせてしまった。

 そうはっきりと感じるほどの表情を見せられる。

「絶対に春希と関わらないで」
「投稿をするのもダメ」
「これ以上、春希を惑わせないで」

 女子たちは理不尽な言葉だけを並べて、去っていく。

 今にも彼女たちに飛び掛かりに行きそうなるんちゃんの腕を掴む。

「ゆっこ、どうして止めるの?」

 るんちゃんは言いなれた名を呼んだことに気付いていない。

 まあ、もう隠しようのないことのようだし、気にしたところで仕方がない。

「あの人たちのお願いを聞く気はないけど、もう投稿する気はないし、ハルキって人と関わる気もないから」
「だからって、あの人たちがゆっこにあんなことを言っていい理由にはならないよ」

 るんちゃんは私の分まで怒ってくれているみたいだった。

「でも、本当にどうでもいいし、大人しくしてたらこれ以上絡まれることもないだろうから」

 私が関わりたくないと思っていることが伝わったらしく、るんちゃんは少しだけ落ち着いてくれた。

 だけど、その表情は腑に落ちていないことを語っている。

「私の代わりに怒ってくれてありがとう、るんちゃん」

 るんちゃんは言葉で返す変わりに、私に抱き着いた。

「私は絶対にゆっこの味方だし、誰かに指図されたからって、ゆっこのやりたいことを我慢しなくてもいいんだからね」

 るんちゃんのその言葉は思っていた以上に心に沁みて、私は少しだけ、彼女たちの理不尽な態度に傷ついていたのかもしれないと思った。

 るんちゃんは、私が私に無関心なことにも怒っていたのかもしれない。

 ふと、そんなことを思った。

「ありがとう、るんちゃん」

 るんちゃんの背中に手を伸ばし、もう一度その言葉を繰り返す。

 今度は若干声が震えていて、私は泣きそうになっているのだと気付いた。

 るんちゃんはそんな私の頭をそっと撫でてくれた。

 その手は優しくて、私は心からるんちゃんが友達でよかったと思った。



 放課後の塾帰り、私は一人で帰路についていた。

 徐々に日が落ちる時間が遅くなっているようで、夕方の六時を過ぎても、まだ明るい。

 闇に染まりゆく空と、夕日に照らされる空の色が混ざり、紫色という空にしては珍しい色になっている。

 そんな不思議な空の中に、一つだけ輝く星を見つけた。

「一番星だ……」

 その美しさに惹かれ、いつものようにカメラを向けるけれど、シャッターボタンを押せなかった。