◇
私が投稿をしなくてもるんちゃんがなにも言わなくなってから、さらに数日後。
事態は最悪な方向へ動き出した。
「春希がゆっこってアカウント名の人を探してるんだって!」
昼休み、教室で女子が大きな声で言ったから、教室にいる全員に聞こえた。
私は、聞こえなかったことにした。
「聞いた?」
るんちゃんはにやにやと笑う。
私は、無関係であると主張するように本から視線を上げない。
「聞いてない」
「やっぱりあのアカウントは、悠斗くんのものだったんだよ」
私が関わりたくない、面倒であると思っていることには気付いていないらしい。
こんなふうに騒がれるのは嫌いだと知っているはずなのに、るんちゃんはこの状況を楽しむことでいっぱいらしい。
「……るんちゃん、私は関わりたくないの。だから、しばらくあだ名で呼ぶのは禁止ね」
「どうして?」
私がそうお願いしている理由がわからないというより、寂しそうだ。
私だって、こんな理由で慣れ親しんだ名を捨てたくはない。
でも、なにがきっかけで絡まれるかわからない以上、予防線は貼っておくべきだろう。
「この騒ぎが落ち着くまでだから。お願い、るんちゃん」
「……わかった。優衣子」
るんちゃんに名前を呼ばれて、私がお願いしたくせに、寂しくなる。
早く落ち着いてくれることを願いながら、読書を進める。
「ねえ」
すると、一人の女子生徒に声をかけられた。
後ろに数人の女子を引き連れて。
なんて最悪な状況だろう。
私の穏やかな学校生活が壊される予感。
「月森さんって、桜庭さんにゆっこって呼ばれてたよね」
知られていたとは、思わなかった。
これなら、るんちゃんにあんなお願いはしなくてもよかったのかもしれない。
「……だから?」
面倒ごとに巻き込まれたくない一心で、無意味に敵対心をむき出しにする。
視界の端でるんちゃんがおどおどしているのが見える。
るんちゃんが心配するほどの喧嘩には発展しないはずだから、そこまで心配しなくてもいいのに。
この程度で不安になるるんちゃんを可愛らしく思いながら、女子たちと向き合う。
「このアカウントって、月森さんの?」
後ろに控えていた女子が、スマホ画面を見せてくる。
間違いなく私のもの。
友達登録をしているのがるんちゃんだけだから、ごまかせそうにない。
「それがなにか?」
諦めて会話をしようとしたその態度が、相手への刺激となってしまった。
私が投稿をしなくてもるんちゃんがなにも言わなくなってから、さらに数日後。
事態は最悪な方向へ動き出した。
「春希がゆっこってアカウント名の人を探してるんだって!」
昼休み、教室で女子が大きな声で言ったから、教室にいる全員に聞こえた。
私は、聞こえなかったことにした。
「聞いた?」
るんちゃんはにやにやと笑う。
私は、無関係であると主張するように本から視線を上げない。
「聞いてない」
「やっぱりあのアカウントは、悠斗くんのものだったんだよ」
私が関わりたくない、面倒であると思っていることには気付いていないらしい。
こんなふうに騒がれるのは嫌いだと知っているはずなのに、るんちゃんはこの状況を楽しむことでいっぱいらしい。
「……るんちゃん、私は関わりたくないの。だから、しばらくあだ名で呼ぶのは禁止ね」
「どうして?」
私がそうお願いしている理由がわからないというより、寂しそうだ。
私だって、こんな理由で慣れ親しんだ名を捨てたくはない。
でも、なにがきっかけで絡まれるかわからない以上、予防線は貼っておくべきだろう。
「この騒ぎが落ち着くまでだから。お願い、るんちゃん」
「……わかった。優衣子」
るんちゃんに名前を呼ばれて、私がお願いしたくせに、寂しくなる。
早く落ち着いてくれることを願いながら、読書を進める。
「ねえ」
すると、一人の女子生徒に声をかけられた。
後ろに数人の女子を引き連れて。
なんて最悪な状況だろう。
私の穏やかな学校生活が壊される予感。
「月森さんって、桜庭さんにゆっこって呼ばれてたよね」
知られていたとは、思わなかった。
これなら、るんちゃんにあんなお願いはしなくてもよかったのかもしれない。
「……だから?」
面倒ごとに巻き込まれたくない一心で、無意味に敵対心をむき出しにする。
視界の端でるんちゃんがおどおどしているのが見える。
るんちゃんが心配するほどの喧嘩には発展しないはずだから、そこまで心配しなくてもいいのに。
この程度で不安になるるんちゃんを可愛らしく思いながら、女子たちと向き合う。
「このアカウントって、月森さんの?」
後ろに控えていた女子が、スマホ画面を見せてくる。
間違いなく私のもの。
友達登録をしているのがるんちゃんだけだから、ごまかせそうにない。
「それがなにか?」
諦めて会話をしようとしたその態度が、相手への刺激となってしまった。