「桜庭さんと光汰って、本当に付き合ってたんだね」

 宇佐美君も私と同じような感想を抱いたようで、隣に座る水野君に言った。

「宇佐美君もそう思ったの?」

 それを私が反応してしまって、宇佐美君は一瞬戸惑いを見せた。

「うん。入学して二週間くらい経った日から、ほぼ毎日のように光汰の口から桜庭さんのこと聞いてたから」
「でも、友達申請したのは二週間前」

 付け足すように、水野君が言った。

 今から二週間前ということは、本当に最近知り合ったということなのか。
 だとしたら、知り合って付き合うまでかなり早かったことになる。

 また今度、るんちゃんに馴れ初めを聞く必要がありそうだ。

「光汰、ずっと緊張してできないって言ってたよね」

 宇佐美君は過去の向坂君を思い出して笑う。

「春希も似たようなものだけどな」

 水野君の鋭い一言で、笑顔が固まった。

 そのやり取りが微笑ましくて、私はつい笑ってしまった。



「海だー!」

 到着してすぐ、るんちゃんが叫んだ。
 そして、靴と靴下を脱ぐと、波打ち際に立って、水で遊び始める。

 提案者というだけあって、楽しそうだ。

 私は、るんちゃんが砂浜に置いた荷物のそばに立ち、るんちゃんと向坂君を眺める。

 これは一体、なんの時間だろう。

「帰っていいか?」

 水野君は遠慮なく言った。

「まあまあ、せっかく来たんだし」

 宇佐美君がなだめたところで、つまらなそうな顔は消えない。

 私は気持ちがわかるから、なにも言えないけど、でも、遊んでいる二人を見ていると、つい写真を撮りたくなった。

 スマホを向け、一枚、また一枚と撮る。

 見返すと、満面の笑みのるんちゃんが収まっている。

 るんちゃんにとっていい思い出になりそうな予感がして、何枚も撮り、それをるんちゃんのスマホに送り付けた。

「ゆっこも遊ぼうよ」

 るんちゃんは素足に砂を付けながら戻ってきた。

「私はいいかな」

 遠慮すると、るんちゃんは不満をこぼしながら、カバンの中にあるタオルで足の砂を落としていく。

 そして、スマホに写真が届いていることに気付いたようだ。

「みんな、そこに横一列に並んで」

 るんちゃんは弾む声で言い、自分の前を指さした。

 私たちはよくわからないまま、るんちゃんに言われた通りに並ぶ。

「海のほう向いて、うん、いい感じ」

 背後でシャッターの音がする。