水野君はやっぱり興味なさそうだけど、宇佐美君は驚いた表情を見せた。

「あのアプリは、校内での交友関係を広げることが目的だったはず。せっかく知り合ったのに、このままなにもなかったことにするのはもったいない気がしませんか」

 それらしいことを言っているからか、いまいち伝わっている気がしない。

「なにより……私が二人のことを、もっと知りたいの」

 本音を言って、私は恥ずかしくなった。

 正直に言うことがこんなにも恥ずかしいなんて、知らなかった。

「月森さん、本当にいいの? また迷惑をかけるかもしれないのに」
「友達なら、迷惑をかけられても気にしないわ」

 私の言葉に喜んでくれたのは、宇佐美君の眩しすぎる笑顔を見れば容易にわかる。

「ありがとう、月森さん」

 そして二人は校舎に戻っていく。

 最後の宇佐美君の笑顔の破壊力に、私もるんちゃんも少し言葉を失い、また階段に座った。

「ゆっこがあんな提案するなんて、思わなかったよ」
「私だって」

 友達はるんちゃんだけでいいと思っていた自分が、宇佐美君たちに対してあんなふうに言うなんて、思ってもみなかった。

「そうだ、いいこと思いついた」

 るんちゃんはにやりと笑う。

「いいことって?」
「ヒミツ」



 放課後、私はるんちゃんに連れられて、学校の最寄り駅に行った。

 そこには宇佐美君と水野君、そして知らない男子生徒がいる。

 いや、どこかで見た気がする。

「ゆっこはまだ会ったことなかったよね。私の彼氏のこた君」
向坂(さきさか)光汰(こうた)です」

 向坂君が頭を下げるから、つられて頭を下げる。

 思い出した。
 一度、るんちゃんに写真を見せてもらったんだった。

「こた君もね、春希君たちと仲がいいんだって」

 それは知らなかった。

 るんちゃんが宇佐美君たちのことに詳しかったのは、向坂君に聞いていたからなのかもしれない。

「よし。じゃあみんな揃ったことだし、今から海に行こう」

 そんなことを考えていたら、るんちゃんの楽しそうな声が聞こえた。

 全員、呆気にとられている。

「るんちゃん、急にどうしたの」

 いや、急ではないのかもしれない。

 昼間に言っていたいいこととは、これか。

「青春といえば海かなって」

 その発想がわからない。

「それに、みんなで撮った写真を投稿すると、友達って感じしない?」

 暴論ではあったけど、駅まで来てしまったということもあり、私たちは仕方なくるんちゃんに付き合うことにした。

 電車に乗ると、るんちゃんは向かい合わせの席に向坂君と座り、楽しそうに話し始めた。

 本当に恋人同士なのか、とか、微笑ましい、とか思うところはありつつ、通路を挟んで隣の席に座る私たちは、話題に困る。