るんちゃんは怒りながら、階段に座る私の隣に腰を下ろした。

「私は、ゆっこを見下してたあの人たちが気に入らないの」

 大声で叫んでもその怒りは収まらなかったようで、るんちゃんは頬を膨らませている。

 これほどに私のことを思ってくれる人がそばにいるなんて、私は幸せ者だ。

「やっぱり私は、仲良くするのはるんちゃんだけでいいかなって、思ったよ」

 人脈を広げることが大切なのだとしても、今の私には、るんちゃんだけで十分だ。

 そう思ってしまうほどに、ここ数日の出来事は私の心に悪影響を与えていた。

 ふと、るんちゃんの切なそうな瞳が視界に入る。

 るんちゃんこそ、悪いことはしていないのだから、そこまで罪悪感を抱かなくてもいいのに。

 そんなことを考えながら、流れていく雲を見つめる。

「……私ね、水野君とは仲良くなりたいって、思ったんだよ」

 水野君に声を掛けられたとき。
 水野君と話したとき。

『U』のアカウントで夜空の投稿がされたとき。

 私は水野君のことを知りたいと思った。

 それは、嘘ではない。

 だけど、私は彼らのなにを信じればいいのか、わからなくなっていた。

「春希君たちは、なんであんなことをしてるんだろうね」

 るんちゃんも私と同じように空を眺める。

 私たちが考えたところで答えなんて見つかるわけもなく、私たちはただ、静かに空を見ていた。

 すると、背後の鉄製のドアが開く音がした。

 振り返ると、気まずそうにする宇佐美君と、面倒そうにする水野君がいる。

「あの、さっきはごめんなさい」

 宇佐美君が悪いわけではないのに、宇佐美君はその場で頭を下げた。

「どうして宇佐美君が謝るの?」
「僕のせいで、月森さんは嫌なことを言われたから……」

 そう言われてしまうと、言葉が見つからない。

 あの言葉を言った彼女が悪いことに変わりはないけれど、原因を考えて行くと、そこにたどり着いてしまうから。

 そして、四人も集まっているのに、誰もなにも言わなくて、五時間目の始まりを告げるチャイムが鳴るまで、その場の空気は静寂に支配された。

「まず確認しておきたいんだけど、春希君たちはゆっこを傷付けるつもりでこんなややこしい騒ぎを起こしたわけじゃないんんだよね?」

 るんちゃんは今、この学校の全員を敵に回してしまいそうな勢いだった。

 学年一の人気者にテンションが上がっていたのが嘘のように、今のるんちゃんは宇佐美君を睨んでいる。