「どうしよう、るんちゃん……私、酷いこと言っちゃった……」

 るんちゃんは私の頭にそっと触れる。

「なにがあったの?」

 私たちは廊下の奥に移動し、屋上でのやり取りを伝える。

 改めて、自分が最低なことを言ったのだと思い知らされる。

 どうして二人があんなややこしいことをしていたのか、私は知らない。

 あの様子だと、面白がってあんなことをしたようには思えない。

 きっと、なにか事情があった。

 それなのに、私は責めるような言葉を言った。

 鈴梨学園に通う生徒しか利用していないからと安心し、顔の見えない相手がどんな人なのかを調べることをしなかった。

 ネットの情報を鵜呑みにしたのは、私たちだ。

 宇佐美君たちだけが悪いわけではない。

 そう思えば思うほど、私はあんなことを言ってしまった後悔に押し潰されそうになる。

「ゆっこ、謝ろ?」

 視線を上げると、るんちゃんの強い瞳があった。

「謝って済むなら……」
「警察はいらないって? でも、謝らないことには始まらない。間違えたってわかったんだもん。まずは謝ろう。そして、春希くんたちの話を聞こう」

 正論だった。
 言い返す余地はない。

 私が小さく頷くと、るんちゃんはそのまま腕を引っ張って歩き始めた。

「今から行くの?」
「こういうのは先延ばしにしないほうがいいの」

 そうかもしれないけれど、今、宇佐美君に会う勇気はない。

 逃げたい気持ちが強くなっていくのに、思いのほかるんちゃんの力が強くて、逃げられない。

 るんちゃんは周りの女子に宇佐美君の居場所を聞きながら進んでいく。

 そして辿り着いたのは、宇佐美君のクラスだ。

 私が歓迎されていないのは、女子の視線だけでわかる。

 私が震えているのが伝わってしまったようで、るんちゃんはより強く、私の手を握った。

 そのままるんちゃんに引っ張られて、教室内を歩いていく。

「月森さん……」

 るんちゃんの背に隠れてしまっていたから、宇佐美君がどんな表情をしているのかはわからない。

 でも、傷付いた声をしているのは、伝わってきた。

 私はるんちゃんの横に立ち、頭を下げる。

「……さっきは酷いことを言って、ごめんなさい」
「そんな、謝らないで。僕たちこそ、ややこしいことをしてごめんね」

 許してもらえたことで一気に安心し、私の耳に周りの声が届く。

 私を鬱陶しいと思っている声がほとんどだが、この状況に困惑している声もあった。