翌日の昼休み、私は逃げ出したい衝動に駆られていた。

 青空の広がる屋上には、日差しから逃げるように僅かな影に隠れる私と、ハルキ。

 るんちゃんは?
 水野君は?

 どうして、こんなことになった?

「あの……月森さん、僕のせいで迷惑かけてごめんね」

 そう思うなら、今すぐ教室に戻ってほしい。

 私に関わらないでほしい。

 そんなことを考えているくせに、誰かを傷付けてしまうような言葉を言うのは怖くて、私はハルキの声を聞き流していく。

「今日も迷惑かなって思ったんだけど、月森さんからメッセージが届いて、僕、嬉しくて」

 ハルキは少しだけ困ったように笑いながら言う。

「……は?」

 遅れて理解して、出た言葉はそれだった。

 私の聞き間違いだろうか。

「私がメッセージを送ったって、いつ?」
「昨日。ほら」

 ハルキに見せられたスマホには、たしかに昨日のメッセージが届いている。

 だけど、私は、ハルキには送っていない。

『U』に送ったことは間違えていない。

 まさか。

「貴方のアカウント、ハルじゃないの?」
「あれは、悠斗のアカウントなんだ」

 もはや、なにが起きているのかわからない。

 ハルが水野君で、Uがハルキ?

「……なりすまし?」
「いや、それはできないようになってるでしょ?」

 学校からの仕組み上はそうだが、この状況からして、なりすまし以外になにがある。

「じゃあ名前は? ハルと(ユウ)。どう考えても」
「あれは(ユウ)と読むより、ローマ字読みをするんだ。僕の名前は、宇佐美(うさみ)春希だから。それから、悠斗の悠はハルって読める。ちゃんと、名前から外れてないでしょ?」

 屁理屈を並べられている気分だ。

 ということは、私に友達申請をしてきたのは、宇佐美君ということだったのか。

 彼が私に興味を持ったというのは、本当だったらしい。

 聞きたいこと、言いたいことはまだたくさんある。

「貴方たちは、私たちを騙していたのね」

 だけど、二人のアカウントが逆だった。

 たったそれだけの情報は処理しきれなくて、私は酷い言葉を投げつけた。

 宇佐美君の傷付いた顔を横目に、私はその場を離れた。

 教室に戻る途中、るんちゃんと出会う。

「ゆっこ、屋上に行かなかったの?」

 るんちゃんの顔を見て、私は少しだけ冷静になり、自分がなにを言ったのか思い返した。

 その後悔に押し潰されそうになり、助けを求めるように、るんちゃんに抱き着いた。

「ゆっこ?」