「そういえば、ゆっこ、先生になにか言われたりした?」

 るんちゃんは心配そうに言いながら、卵焼きを口に運ぶ。

 今回のこの騒動は、当然教師の耳に入った。

 私のアカウントに大量の友達申請が来たことも把握されていて、私は朝のホームルームが終わってから職員室に呼び出された。

「なにかっていうか、大丈夫か?みたいなことしか言われてないよ。もともとSNSには疎いから、気にしてな……」

 言葉が止まった。

 これは、嘘だ。

 たしかに気にしてはいなかったけど、それはただの強がりだったわけで。

 大丈夫ではなかったのに。

 あの質問の仕方は、禁止すればいい。

「ゆっこ?」
「いや……さすがに今まで通りみたいには、過ごせないよ」

 るんちゃんの顔が困惑を語る。

 困らせたくはないのに、上手く誤魔化すこともできそうになくて、私たちの会話は止まってしまう。

「あ……」

 すると、るんちゃんはスマホを見てそう零した。

「メッセージ、返ってきた」

 もっと早く返ってきていたら、るんちゃんはここまでテンション低く言わなかっただろう。

 るんちゃんがスマホを差し出したから、私はそれを受け取る。

『メッセージありがとうございます。昼休みですけど、友人を呼んでも構いませんか?』

 私は少し安心した。

 水野君と二人きりにされてしまうと、きっと緊張で上手く話せなかっただろうから。

『はい、大丈夫です』

 そして、メッセージを送って気付いた。

 水野君の友達は、ハルキだ。

「るんちゃん、メッセージって取り消すことできたっけ?」
「うん? できるけど」

 るんちゃんに任せたほうが速いと思ってスマホを返す。

「もう手遅れ……かな?」

 るんちゃんは困惑しながら画面を見せてくる。

『じゃあ、場所は屋上でどうですか?』

 メッセージが、返ってきている。

「るんちゃん……」
「はいはい、私も行くってことね」

 話が早くて助かる。

 るんちゃんは私の代わりにメッセージを打っていく。

「二対二なら、女子はうるさくないかな」
「どうだろうね。春希くんの興味がゆっこから逸れてたら、静かになってくれるだろうけど」

 そもそも、そこだ。

 なぜ人気者のハルキは、風景写真しか載せていない私のアカウントに興味を持ったのか。

 考えたところで答えは出ないし、面倒ごとが増えてしまったことに対して、ため息をつかずにはいられない。

「ハルキとは関わりたくないなあ」

 青空を気持ちよさそうに流れていく雲を眺めながら、私はそう呟いた。