◇
「友達登録はできたから、あとはゆっこがメッセージを送るだけだよ」
空き教室に移動し、窓際の前の方に座ると、るんちゃんはスマホを差し出してきた。
いつの間にそんなことをしていたのか。
準備が万端すぎて、もはや怖かった。
「……やめる?」
るんちゃんはスマホを引っ込める。
るんちゃんにここまでさせておいて、逃げるのは違う気がした。
手を伸ばすと、るんちゃんは笑顔でスマホを渡してきた。
向き合って座っていたのに、るんちゃんはわざわざ隣に移動してきて、スマホの画面をのぞき込む。
こんなにも見張られた状態でメッセージを打つのは緊張する。
『こんにちは、月森です。友人のアカウントを借り、メッセージを送らせていただきます』
「ゆっこ、固すぎ」
るんちゃんは信じられないという顔をしている。
「そのまま社会人みたいに堅苦しいメッセージを送る気? 高校生だよ? もっとフレンドリーにいこうよ」
「私には無理」
るんちゃんの提案を却下し、続きを打つ。
『先日水野君と話し、もっと仲良く』
そこまで打って、私はメッセージを消した。
「なんで消しちゃうの?」
「いや、これはさすがに私らしくないというか、恥ずかしい」
本心ではあるけど、きっと、送ったあとに恥ずかしさのあまり後悔してしまうやつだ。
しかしそうなると、なにを打つのが正解なのかわからなくなる。
「仲良くしたいでいいのに」
るんちゃんは言いながら、私の手からスマホを取り上げる。
「ちょっと」
抵抗しようとしたけど、るんちゃんのスマホである以上、強くは言えない。
『こんにちは、月森です。友達のアカウントを借りてメッセージを送ってごめんなさい。いきなりですが、明日、一緒にお昼休みを過ごしませんか?』
「どう?」
るんちゃんは満足そうにしている。
私の堅苦しいメッセージが、柔らかくなっている。
いや、待て。
「るんちゃん、これ、送ってない?」
「……あ」
その反応を見るに、送る前に私に確認をさせるつもりだったのだろう。
だけど、勢いで送信してしまった。
「るんちゃん……」
「ご、ごめん、ゆっこ。こんな強引なことするつもりはなくて」
るんちゃんが慌てて謝る姿を見せられると、責められない。
それに、送ってしまったものはどうしようもない。
「……いいよ」
私が許すと、るんちゃんは胸をなでおろした。
そして元の場所に戻ると、弁当箱を開く。
「友達登録はできたから、あとはゆっこがメッセージを送るだけだよ」
空き教室に移動し、窓際の前の方に座ると、るんちゃんはスマホを差し出してきた。
いつの間にそんなことをしていたのか。
準備が万端すぎて、もはや怖かった。
「……やめる?」
るんちゃんはスマホを引っ込める。
るんちゃんにここまでさせておいて、逃げるのは違う気がした。
手を伸ばすと、るんちゃんは笑顔でスマホを渡してきた。
向き合って座っていたのに、るんちゃんはわざわざ隣に移動してきて、スマホの画面をのぞき込む。
こんなにも見張られた状態でメッセージを打つのは緊張する。
『こんにちは、月森です。友人のアカウントを借り、メッセージを送らせていただきます』
「ゆっこ、固すぎ」
るんちゃんは信じられないという顔をしている。
「そのまま社会人みたいに堅苦しいメッセージを送る気? 高校生だよ? もっとフレンドリーにいこうよ」
「私には無理」
るんちゃんの提案を却下し、続きを打つ。
『先日水野君と話し、もっと仲良く』
そこまで打って、私はメッセージを消した。
「なんで消しちゃうの?」
「いや、これはさすがに私らしくないというか、恥ずかしい」
本心ではあるけど、きっと、送ったあとに恥ずかしさのあまり後悔してしまうやつだ。
しかしそうなると、なにを打つのが正解なのかわからなくなる。
「仲良くしたいでいいのに」
るんちゃんは言いながら、私の手からスマホを取り上げる。
「ちょっと」
抵抗しようとしたけど、るんちゃんのスマホである以上、強くは言えない。
『こんにちは、月森です。友達のアカウントを借りてメッセージを送ってごめんなさい。いきなりですが、明日、一緒にお昼休みを過ごしませんか?』
「どう?」
るんちゃんは満足そうにしている。
私の堅苦しいメッセージが、柔らかくなっている。
いや、待て。
「るんちゃん、これ、送ってない?」
「……あ」
その反応を見るに、送る前に私に確認をさせるつもりだったのだろう。
だけど、勢いで送信してしまった。
「るんちゃん……」
「ご、ごめん、ゆっこ。こんな強引なことするつもりはなくて」
るんちゃんが慌てて謝る姿を見せられると、責められない。
それに、送ってしまったものはどうしようもない。
「……いいよ」
私が許すと、るんちゃんは胸をなでおろした。
そして元の場所に戻ると、弁当箱を開く。