翌日も、学校帰りに神社に立ち寄り、重い足取りで梶原家を目指す。

 帰宅して、まずはおばあちゃんの食事の介助をする。その後、夕飯の準備をする芳子のもとへ行き、手伝いをするのがいつもの流れだ。

「それにしても、今年も降らないなあ。空梅雨に続いて、夏以降もまとまった雨が降っていない」

 夕飯を食べながら、勝吾が嘆く。隣に座った芳子が、「そうですね」とうなずき返した。

 この辺りは、農家が多い。梶原家もほかの家ほど広くはないもの、畑を所有している。自分たちで食べる分に加えて、村の外にある道の駅に卸す程度に作っており、この家に来て以来、週末は私も手伝いをしている。

「去年もそんな感じでしたし……」

 ここのところ下沢村は天候に恵まれず、不作が続いているらしい。さすがに切羽詰まってきているようで、この話題は何度も耳にしてきた。

昭三(しょうぞう)じいさんが、大昔にやっていた雨乞いやらの神事を復活させようなんて言い出しているぞ」
「神頼みで、なんとかなればいいですが」

 昭三じいさんというのは、この村の生き字引のような人だ。頻繁に耳にしていたため、村の人たちとそれほど交流のない私も覚えてしまった。

 閉鎖的な地域ではあるが、私のイメージに反して、意外にも昔ながらの伝統を引き継いでいるわけではない。田舎を嫌って他所へ出て行ってしまう人も多く、人手不足で様々なことが簡素化されているようだ。

「それだけ、切羽詰まってるんだろ」

 ぶっきらぼうに言い放った昭人に、公佳以外の視線が集中する。が、彼は誰とも目を合わさない。

「まあ、そうだな。とりあえずは、週末に神社の手入れをするつもりだ」

 村にある神社と言えば、いつも立ち寄るあの場所以外、私は知らない。

「綾目、お前も参加するように」
「は、はい」

 勝吾から鋭い視線を向けられて、慌てて返事をした。

 ひとつの家庭からひとりも手伝いを出さなければ、ここでは途端に村八分のように扱われてしまう。これまでも清掃活動などが数回あり、私もその都度参加してきた。ただ、やはりよそ者はなかなか受け入れてもらえないようで、回数を重ねても馴染める気がしない。

 それから、話題はふたりの子どものことに移っていく。しかし、当の本人たちがほとんど口を開かないため、会話は盛り上がらないまま夕飯を終えた。