父からの訃報が入ったのは、一人暮らしの部屋で董子が淋しく眠りについた翌朝のことだった。
「お母さんが、夜中に倒れて亡くなった――」
声を詰まらせながら泣く父の話が、董子にはどこか遠くの世界で起きている出来事のように思えた。
普段は同じくらいのタイミングで布団に入る両親だったが、昨夜の母は、なかなか帰宅しない董子のことを待っていて、寝る準備が遅くなった。
作り過ぎた料理を保存したり、洗い物をしたり。
台所で忙しく働く母に「先に寝ていて」と言われ、父は布団に入ったらしい。
そのまま父は朝まで寝てしまい、目を覚ますと、母がリビングで倒れていた。
慌てて救急車を呼んだが、母は既に息を引き取ったあとだった。
「倒れたときにすぐ気が付いていれば助かったかもしれない――」
父は泣きながら、私に後悔の言葉を伝え続けてきた。