「あまりお口に合いませんでしたか?」
「いえ。辛くておいしいです」
「それはよかった」
董子が口に手をあてたまま首を横に振ると、店主が眦を下げて柔らかく微笑んだ。
ドクンと胸が鳴り、董子はそれを誤魔化すようにピリ辛のレンコンのきんぴらをハイペースで口に運ぶ。焦って食べていると、唐辛子の辛さが連続でピリリと舌にきた。
「お水、飲まれますか?」
涙目で口を押さえた董子に、店主が柔らかな笑顔でガラスのコップを差し出してくる。
「ゆっくり召し上がってください。メインのお料理ができるまでまだかかるので」
「……あ、ありがとうございます――」
董子は店主からコップを受け取ると、その水を半分くらい一気に飲んだ。
水の冷たさが、痺れた舌先に心地よい。だが、舌先の痺れが和らいでも頬の熱が上がるばかりでひいていかない。それはきっと、唐辛子のせいだけではないからだ。
ふうーっとため息を吐くと、店主が董子を気遣うように微笑みかけてきた。
「少しは落ち着かれましたか?」
「あ、はい。大丈夫です……!」
董子がピシッと背を伸ばして座り直すと、店主は目を細めて、クツリと笑った。