嘘は通用しない。愕然と、肩を落とす彼女を見て、鴇姫はくすりと笑う。

「肯定したの? 兄上みたいに騙しつづけてもよろしいのに」

 柔らかいまとわりつく姫君の声。笹音は両手で自分の両耳を塞ぐ。聞きたくない。その反応が鴇姫を更に喜ばせるのだと知っていても、笹音は。

「騙してなんか……いない!」

 弱々しい否定の言葉ですら、簡単にからめとられる。

「騙しているのと同じだと思うの。だって貴女」

 責めたてられて、笹音は蒼白な表情のまま、部屋を、飛び出す。
 障子戸が乱暴に閉じられる音が、雪に消される。真実を暴露された彼女は、どこへ向かうのだろう。

 ……別に兄上にお伝えするわけじゃないのに。

 鴇姫は背中を見送り、呟く。

「……莫迦ね」

 静かに溜め息を、つく。