『撮影会は海に決定。それと、別日にボウリング行こう』

 ゴールデンウィーク数日前の夜、佐伯先輩が作った四人のグループトークルームに、佐伯先輩がメッセージを送ってきた。

 海で撮影会というのはわかるけど、ボウリングはいつ決まったんだろう。

『べんきょー会も追加で』

 それを聞くより先に、咲楽が送ってきた。

 咲楽らしくない発言だと思ったけど、今日の昼間に出された数学の課題を思い出した。

『勉強会?』
『数学の課題、1人だとできないです、確実に』
『私も少し、英語教えてほしいです』

 私はそこまで数学は苦手ではないけど、英語がわからなくなりつつあった。

 ここぞとばかりに、私はそんなメッセージを送る。

『栄治、出番だ』
『僕より佐伯のほうが数学、得意でしょ』

 私のスマホに、夏川先輩からのメッセージが届いた。

 佐伯先輩に向けてのものだとわかっているけど、夏川先輩からこれほど砕けたメッセージが届くのは、不思議な感じがする。

『じゃあ、栄治は英語担当だな』
『僕、教えるの得意じゃないから』
『可愛い後輩のためじゃん、頑張れよ』

 佐伯先輩と夏川先輩の、慣れたやり取りが流れていく。

 きっと咲楽も、この会話に混ざることができないのだろう。

 しばらく、二人だけのメッセージが飛び交う。

『よし、撮影会のときに他の日のこと決めよ。今日はおやすみ』

 佐伯先輩のそのメッセージにより、私たちの会話は終了した。

 おやすみのメッセージを送ると、私はトークルームを閉じる前に、会話を遡る。

 ちゃんと、約束のメッセージがある。

 こんなにもわくわくする連休は久しぶりだ。

『古賀ちゃん』

 すると、グループではない、個人宛に佐伯先輩からメッセージが送られてきた。

『栄治、5月13日が誕生日だよ』

 佐伯先輩の意図が見えなくて、私は『そうなんですね』とだけ返した。

 もしかして佐伯先輩は、私が夏川先輩に対して、恋愛感情を抱いていると勘違いしているのかもしれない。

 まあ、無理もない。

『私、夏川先輩に会いたいんです』

 写真部に行ったとき、つまりは佐伯先輩との初対面でこう言ったら、誰だってそう思うだろう。

「そういうのじゃなくて、純粋に夏川先輩のこと知りたいだけなんだけどなあ……」

 きっとこの感覚を伝えたところで、からかわれるに決まっている。

 佐伯先輩にはっきりと言われるまでは、曖昧なままにしておこう。

 そんなことを思いながら、私は部屋の明かりを消し、眠りについた。