古賀は視線を落として、柔らかく微笑む。
「だって、夏川先輩に撮られているみんな、楽しそうだった。生き生きしてた。先輩が本当に自分のために写真を撮っている人なら、誰もあんな自然な表情は見せないと思います」
もう一度その大きな黒い瞳に僕を写すと、僕が惹かれた笑顔を見せる。
なんて眩しいんだ。
「私は、先輩の写真は、先輩が素敵な人だから撮ることができた写真だと思います。先輩自身が否定したら、ダメですよ」
僕は泣きたくなった。
眩しくて仕方ない景色が、滲んでいく。
そんな中で、古賀の表情がまた不満そうになるのが見える。
「それに、私が好きになった写真を、本人にそう言われると悲しいです」
真っ直ぐに伝えられた“好き”という単語は、しっかりと僕の涙腺を刺激してきた。
我慢しようとしていたのに、頬に一筋の涙が流れる。
久々の肯定の言葉が、酷く心に染みた。
僕の涙に気付き、古賀は慌てている。
「ご、ごめんなさい、私、なにか嫌な思いにさせるようなこと……」
「違うよ。逆だ」
僕は食い気味に否定し、右手の親指で左頬に流れた涙を拭う。
そして、古賀を安心させるために、笑顔を作る。
「ありがとう、凄く……嬉しい。ありがとう」
長いこと笑っていなかったから、ぎこちなかっただろうに、古賀は最高の笑顔になった。
僕はやっぱり、この表情を撮りたい。
正直、写真を撮るのはまだ少し怖いし、わだかまりが残ったまま写真を撮るのは抵抗がある。
でも、古賀の今の表情を残せないほうが後悔する。
「そのカメラ、少しだけ借りてもいい?」
古賀は迷わず、僕にカメラを差し出した。
どれだけ僕の写真を楽しみにしてくれているのか、言葉にされずとも、その表情を見ればわかる。
数ヶ月ぶりにカメラを持ち、僕は数歩、後ろに下がる。
太陽の光が反射している広い海と、その手前で目を輝かせている古賀。
僕はどちらもフレームに収まるように調整し、シャッターを押す。
すると、古賀はなにかに気付いた。
「先輩、今の、私まで撮ってません?」
確認がしたいのか、古賀は僕に近寄ってくる。
「さあ、どうだろう」
僕はわざとらしく、そんなことを言ってみる。
自分が被写体になるのは嫌だったようで、古賀は両頬を空気で膨らませている。
あまり嫌な思いはさせたくないのに、僕はもう一度、古賀を撮った。
「もう、夏川先輩! 私、写真撮られるのは苦手なんです!」
古賀の大声を聞いて、僕は笑ってしまう。
「でもほら、綺麗に写ってるよ」
僕がカメラを渡すと、古賀は写真を確認する。
僕の写真を見て、少し複雑そうにしながらも、照れて笑ってくれた。
それにつられて、僕も嬉しくなる。
この感覚も、懐かしい。
古賀は凄い。僕に、いろんなことを思い出させてくれる。
「だって、夏川先輩に撮られているみんな、楽しそうだった。生き生きしてた。先輩が本当に自分のために写真を撮っている人なら、誰もあんな自然な表情は見せないと思います」
もう一度その大きな黒い瞳に僕を写すと、僕が惹かれた笑顔を見せる。
なんて眩しいんだ。
「私は、先輩の写真は、先輩が素敵な人だから撮ることができた写真だと思います。先輩自身が否定したら、ダメですよ」
僕は泣きたくなった。
眩しくて仕方ない景色が、滲んでいく。
そんな中で、古賀の表情がまた不満そうになるのが見える。
「それに、私が好きになった写真を、本人にそう言われると悲しいです」
真っ直ぐに伝えられた“好き”という単語は、しっかりと僕の涙腺を刺激してきた。
我慢しようとしていたのに、頬に一筋の涙が流れる。
久々の肯定の言葉が、酷く心に染みた。
僕の涙に気付き、古賀は慌てている。
「ご、ごめんなさい、私、なにか嫌な思いにさせるようなこと……」
「違うよ。逆だ」
僕は食い気味に否定し、右手の親指で左頬に流れた涙を拭う。
そして、古賀を安心させるために、笑顔を作る。
「ありがとう、凄く……嬉しい。ありがとう」
長いこと笑っていなかったから、ぎこちなかっただろうに、古賀は最高の笑顔になった。
僕はやっぱり、この表情を撮りたい。
正直、写真を撮るのはまだ少し怖いし、わだかまりが残ったまま写真を撮るのは抵抗がある。
でも、古賀の今の表情を残せないほうが後悔する。
「そのカメラ、少しだけ借りてもいい?」
古賀は迷わず、僕にカメラを差し出した。
どれだけ僕の写真を楽しみにしてくれているのか、言葉にされずとも、その表情を見ればわかる。
数ヶ月ぶりにカメラを持ち、僕は数歩、後ろに下がる。
太陽の光が反射している広い海と、その手前で目を輝かせている古賀。
僕はどちらもフレームに収まるように調整し、シャッターを押す。
すると、古賀はなにかに気付いた。
「先輩、今の、私まで撮ってません?」
確認がしたいのか、古賀は僕に近寄ってくる。
「さあ、どうだろう」
僕はわざとらしく、そんなことを言ってみる。
自分が被写体になるのは嫌だったようで、古賀は両頬を空気で膨らませている。
あまり嫌な思いはさせたくないのに、僕はもう一度、古賀を撮った。
「もう、夏川先輩! 私、写真撮られるのは苦手なんです!」
古賀の大声を聞いて、僕は笑ってしまう。
「でもほら、綺麗に写ってるよ」
僕がカメラを渡すと、古賀は写真を確認する。
僕の写真を見て、少し複雑そうにしながらも、照れて笑ってくれた。
それにつられて、僕も嬉しくなる。
この感覚も、懐かしい。
古賀は凄い。僕に、いろんなことを思い出させてくれる。