目が、惹き付けられた。
こんな強烈な一目惚れは初めてで、私はただ、立ち尽くしていた。
「依澄、どうした?」
親友の咲楽の声が聞こえても、私は固まったまま。
咲楽と来た高校の文化祭で、私が立ち止まったのは、美術部の展示コーナー。
賑やかな世界から逃げるように、静かな場所を探して見つけたのが、そこだった。
写真も絵も興味ないけど、入ったからには一通り見てみようと回ったときだ。
私は、ある写真の前で足を止めた。
いや、止まってしまった。
飾られていたのは、四枚の写真。
四コマ漫画のように飾られた写真には茶色のボブヘアの女の人が写っている。
喜怒哀楽に近い表情変化が見れる。
最初の横顔は、何かを切なそうな瞳で眺めている。
その奥で何を見たのか気になってしまうところなのに、次の瞬間、写真を撮られていることに気付き、怒っている。
だけど、最後には見ている者までも幸せな気持ちにさせるほどの笑顔を向けている。
私は、その人の表情から目が離せなかった。
なんて、楽しそうなんだろう。
この人の笑顔が素敵なのか、撮影者が瞬間を切り取るのが上手なのか。
写真なんてまるで知らない私には、それすらもわからない。
ただ、誰がこの写真を撮ったのか気になって、視線を動かすと、写真の下に名があることに気付いた。
『夏川栄治』
ようやく動き出した私は、その教室内で『夏川栄治』を探す。
笑顔、怒った顔、真剣な顔、そしてやっぱり笑顔。
『夏川栄治』が撮った写真は人を写したものが多く、どれも表情が豊かだった。
だけど、たくさんある中で、一目惚れした写真が一番素敵だと思った。
私はまた、その写真の前に戻ってくる。
「……決めた」
「決めたって、なにを?」
私の後を付いてきていた咲楽が、欠伸をしながら聞き返す。
「私、この高校受験する」
ずっと目の前の写真を見ていたから、咲楽がどんな顔をしたのか、私は知らない。
でも、勢いよく腕に絡みついてきたところを見るに、喜んでいるらしい。
「じゃあ、私もここにしよっかな」
「咲楽、学力足りるの?」
咲楽は頬を膨らませて、私の肩を叩く。
教室を出ていく咲楽を追いかける私の足は、軽かった。
こんな強烈な一目惚れは初めてで、私はただ、立ち尽くしていた。
「依澄、どうした?」
親友の咲楽の声が聞こえても、私は固まったまま。
咲楽と来た高校の文化祭で、私が立ち止まったのは、美術部の展示コーナー。
賑やかな世界から逃げるように、静かな場所を探して見つけたのが、そこだった。
写真も絵も興味ないけど、入ったからには一通り見てみようと回ったときだ。
私は、ある写真の前で足を止めた。
いや、止まってしまった。
飾られていたのは、四枚の写真。
四コマ漫画のように飾られた写真には茶色のボブヘアの女の人が写っている。
喜怒哀楽に近い表情変化が見れる。
最初の横顔は、何かを切なそうな瞳で眺めている。
その奥で何を見たのか気になってしまうところなのに、次の瞬間、写真を撮られていることに気付き、怒っている。
だけど、最後には見ている者までも幸せな気持ちにさせるほどの笑顔を向けている。
私は、その人の表情から目が離せなかった。
なんて、楽しそうなんだろう。
この人の笑顔が素敵なのか、撮影者が瞬間を切り取るのが上手なのか。
写真なんてまるで知らない私には、それすらもわからない。
ただ、誰がこの写真を撮ったのか気になって、視線を動かすと、写真の下に名があることに気付いた。
『夏川栄治』
ようやく動き出した私は、その教室内で『夏川栄治』を探す。
笑顔、怒った顔、真剣な顔、そしてやっぱり笑顔。
『夏川栄治』が撮った写真は人を写したものが多く、どれも表情が豊かだった。
だけど、たくさんある中で、一目惚れした写真が一番素敵だと思った。
私はまた、その写真の前に戻ってくる。
「……決めた」
「決めたって、なにを?」
私の後を付いてきていた咲楽が、欠伸をしながら聞き返す。
「私、この高校受験する」
ずっと目の前の写真を見ていたから、咲楽がどんな顔をしたのか、私は知らない。
でも、勢いよく腕に絡みついてきたところを見るに、喜んでいるらしい。
「じゃあ、私もここにしよっかな」
「咲楽、学力足りるの?」
咲楽は頬を膨らませて、私の肩を叩く。
教室を出ていく咲楽を追いかける私の足は、軽かった。