「あー……えっとな。前から夏音のこと知ってたんだよな。コンクールの事も美術部に友達がいる奴から聞いてさ。夏音さ、俺らが、部活終わった後も、一人で美術室で色塗りしてただろ?」

「あ、うん」

心臓は、トクトクからドクドクに変わる。

来斗は、完全に上半身を起こすと、胡座をかいた。

「随分前に部活終わって、着替えて帰るときにさ、スマホ教室の机に忘れてること気づいて取りに行ったんだ。そしたら、美術室の電気が、点いてて、思わず覗いたら、俺の泳いでる姿を一生懸命、水彩絵の具で色塗りしてる女の子いてさ、それが、夏音だった」

私が、慌てて起き上がると、来斗は、恥ずかしそうに頭をガシガシと掻いた。

「それから何となく気になって……時々見てた。いつも誰よりも遅くまで絵と向き合ってる夏音見てたら、俺も頑張ろって思ってさ。でも負けたから、部活サボって、海で思いっきり叫んでやろうかと思ったら、夏音に先越された」

知らなかった。来斗が私の事を知ってくれてたなんて。何も言葉が出てこない私の額を来斗が、コツンと突いた。

「恥ずいだろ、んな顔すんなよ」

だって、私も来斗が、気になってたから。
いつも誰よりも努力してるのを知ってたから。

「私も……来斗を見てた」

「え?」